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【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「マネジメントの肖像⑮ヘンリー・ミンツバーグ」から

2011.9.7  日経産業新聞の記事「マネジメントの肖像⑮ヘンリー・ミンツバーグ」から

「多忙な経営者はリーダの役割を果たさず、与えられた役割をこなすだけだ」

コラムの著者 ブース・アンド・カンパニー ディレクター岸本義之氏が示す今回の人物は、前回紹介のあったイゴール・アンゾフの戦略的計画を批判したヘンリー・ミンツバーグだ。(▶参考

アンゾフが唱えた戦略的計画を批判したものとして、ミンツバーグ以外に、1970年の著書『未来の衝撃』を著した未来学者アルビン・トフラーがいる。階層化の行き過ぎた組織を批判し、不確実性が高まり、変化が加速する時代追い付いていけなくなると指摘した。ミンツバーグも同様に、戦略的計画を批判した。彼は、経営者側の視点で観察することから始め、長期的な視野をもって思考している時間を測定した。1つの問題に費やす時間は平均9分であったことから、経営者が時間の奴隷として雑事や電話に追われながら次々と仕事をこなすことを発見した。

この観察から経営者の「職務」を次のように捉えた:

【対人関係の役割】

  • 外部に対して多目的に組織を代表すること
  • 部下を動機付けること
  • 社内の連絡を維持すること

【情報提供の役割】

  • 社内の情報の流れを維持する
  • 部下に情報を流す
  • 外部者に情報を伝える

【意思決定の役割】

  • 事業に変化を起こし、障害を解決する
  • 資源配分を行う
  • 外部との交渉を行う

ミンツバーグは、1950~1960年代の大企業の経営者は、「もはやリーダーらしき役割はほとんど果たしておらず、与えられた役割をこなしているだけだ」と批判した。また、ミンツバーグは、アンゾフ流の戦略的計画に批判を加え、戦略とは「結果として形成される」か「意図をもった展望として描かれる」ものであって、計画できるものでないと主張した。

更に、ミンツバーグは、戦略的計画の落とし穴について触れている:

  • 不連続な変化を予測できるという前提を置いてしまう
  • 計画者が現場から遠い場所に離れてしまう
  • 戦略策定を公式化できるという前提を置いてしまう

事実、当時、測定可能なデータのみに頼った戦略で現実離れしてしまい、良い結果は出てこなかった。アンゾフとミンツバーグの言い争いは、結果としてアンゾフの戦略的計画の失敗を認めることで終わった。coldsweats02


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の特集記事「強い大学:第8部稼ぐ力を磨く(下)」から

2011.9.7   日経産業新聞の特集記事「強い大学:第8部稼ぐ力を磨く(下)」から

研究費はステークホルダー(利害関係者)の課題解決にあり!

コラムでは、石川県の金沢工業大学を事例に企業の受託または共同研究で独立した財源を確保しようとする姿を追っている。

金沢工業大学の事例は「夢考房(よめこうぼう)」である。夢考房は、ソーラーカーなど複数のモノ作りプロジェクトを進行し、予算管理から技術協力企業との交渉まで学生自身が取り組むものだ。同大学は、2011年度の学校基本調査で、全国の大学生の就職率が6割台の中で、地方私大の異例の90%台を維持する。その秘密は、この企業とのタイアップにある。

少子高齢化と国の歳出削減で、授業料や助成金に財源を頼る大学経営。そのリスクと研究・教育の質を維持するため、戦略的な独立財源が必要となる。そこで企業とのタイアップによる財源と就職率の向上を狙って夢考房のような動きが活発化している。

慶応大学では、「企業が悩む課題に100日以内に答えを出す」を方針として研究費獲得力を高めている。同大学は、私立大学で首位の研究実績58億円をひねり出している。また、受託研究件数の私立大学第3位の東海大学は、上位とは異なった戦略をとっている。「100万円以下の研究費でもやる」を合言葉に、中堅中小企業のニーズをきめ細かく開拓する。さらに企業からの寄付金を主軸に置く大学も出てきた。トヨタ自動車から15億円から17億円の寄付金を得ている名古屋市の豊田工業大学だ。ただし、同大学学長の榊裕之氏は、「研究方針でトヨタに口だしされたことは一度もない」と語る。トヨタはスポンサーだが、研究テーマは自動車に限らず多岐な分野にわたるという。

豊田工業大学が特殊な事例ではなく、企業などのステークホルダーが求める研究や人材育成に努めるのが大学経営の基本と考えれば、金沢工大や慶応大の姿勢もうなずける。学生、親、地域、企業など大学をめぐるステークホルダーが満足する解決力が資金を生むのだろう。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「『社会的責任』世界の視点⑧:実践の手引き『ISO26000』」から

2011.9.6  日経産業新聞集の記事「『社会的責任』世界の視点⑧:実践の手引き『ISO26000』」から

企業のみならず、あらゆる組織を対象にした行動規範「ISO26000」

コラムの著者 損害保険ジャパン理事CSR統括部長 関正雄氏が、ISO26000は、企業も含めステークホルダー(関係者)主導で、5年の歳月をかけ、世界の99カ国が参画し、草案へのコメント数も約26000件と記録破りの規格であることを説明している。

ISOは世界最大の国際標準化機関で、ねじの工業規格から、環境や品質管理といったマネジメント規格まで幅広く活動を行い、18000以上の国際規格を生みだしてきた。社会的責任の規格ISO26000を2010年11月に発行した。

関氏がISO26000について以下ようにまとめている:

  • 持続可能な発展のための、あらゆる組織に向けた、社会的責任に関する、実践の手引きである
  • 扱う7テーマ
    • ガバナンス
    • 人権
    • 労働慣行
    • 公正な事業慣行
    • 環境
    • 消費者課題
    • コミュニティーへの参画とコミュニティーの発展
  • 以上の持続可能な発展や社会的責任に関する推奨アクションを網羅する、包括的かつ詳細な手引書
  • あるゆる組織=マルチステークホルダー方式で、政府、企業、労働、NGO、その他有識者の6つのセクター代表で内容を審議した
  • この規格は、環境ISO14001 とは異なり、認証規格ではない。基本事項から始まり、課題とアクション、取り込みのヒントが列記された手引書である。

注目すべきは、地球環境の劣化、貧困問題などグローバルな問題解決の担い手が、各国政府→国連・地域国際連合→企業→課題解決に当たる関係者すべての関与(マルチステークホルダー)と変化してきた点である。従って、ISO26000は、企業だけなく、あらゆる組織の社会的責任規格を与えたものということができる。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の特集記事「強い大学:第8部稼ぐ力を磨く(中)」から

2011.9.6   日経産業新聞の特集記事「強い大学:第8部稼ぐ力を磨く(中)」から

科研費獲得の大学総力戦

コラムでは、明治大学の「競争的資金」である科学研究費補助金(科研費)の採択数増加に向けての取り組みについて取材している。

明治大学研究推進部の小沢芳明研究知財事務長は、科研費獲得の特命を2007年度にうけた。この時点での明治大学の獲得実績は2億5千万円(間接経費を含む)で早稲田大学の8分の1だったという。主因は、申請書類の「致命的な不備の多さ」であった。申請書類のレベルアップと、研究者任せではなく、事務局も致命的な不備について事務局も指摘できるようにトレーニングを実施した。また、締切目前の対応について、救急救命で優先順位を決める「トリアージ」の概念を導入し、選択と集中を行った。一連の取り組みで、11年度の獲得内定額は4億8千万円あまりと5年前のほぼ2倍を達成した。

大学が総力を挙げて獲得する時代に入ったと、小沢氏は語る。さらに巧みな制度設計で4倍の獲得数を得た大学がある。京都産業大学である。

京産大は2007年~09年の3年間総額2億5千万円を投じ、科研費を申請した教員には、採択の有無にかかわらず、最大150万円の研究費を支給する制度を実施した。ただし、不採算となった場合は、翌年は再挑戦を義務付けた。結果、申請件数は、06年度の133件から09年度には187件に増加、科研費も3億9千万円と07年度の4倍に伸ばした。

中央省庁だけでなく、自治体からの受託を増やす大学もある。大阪府立大学や帝塚山学院大学など公私立14大学の連携組織、南大阪地域大学コンソーシアム(堺市)は収入の9割を自治体などからの受託事業で稼ぐ。同組織のコーディネータによると、「責任が発生する契約を持ち込む」ことで、組織が課題解決を請負、会員大学の教員や学生と契約を結んで義務を遂行する。この制度が、外部資金の獲得の原動力になっているという。

財源確保のために、外部資金の獲得も大学総力戦となっている。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の特集記事「強い大学:第8部稼ぐ力を磨く(上)」から

2011.9.5   日経産業新聞の特集記事「強い大学:第8部稼ぐ力を磨く(上)」から

私大の学費戦略が問われる時代に

コラムでは、慶応義塾大学を軸に、私立大学の学費戦略について解説している。日本私立学校振興・共済事業団によると、私立大学の収入に占める学納金の比率は、09年度で77.2%となっているようだ。学費収入が、私立大学の経営を支えている実態を示している。

慶大では、3万人近い学生の7割が首都圏出身者。景気低迷を受けて、優秀な学生も「地元に近い国公立大学を選ぶ傾向にあるという。ここに同大学の危機感がある。同大学の施策として新設の「学問のすゝめ奨学金」を設定。地域別の奨学金制度で年60万円で計107人に支給、授業料80万円の約8割が賄えるという。このような奨学金制度を導入するのも、親や学生に直接訴求できる費用面のメリットを示し、全国から優秀な人材を取り込もうという考えだ。奨学金を契機に全国の高校が改めて同大学に興味を示し、継続的に優秀な学生を集めれば経営基盤が安定するといった考えである。

さらに値下げ最大33%と学費の大幅な引き下げを考えている大学もある。北海道北広島市の道都大学だ。値下げにより、3~4年後に入学定員を満たし増収効果を考える動きである。

機械的に物価スライドでの値上げによる学費戦略では、他大学との競争に勝てず、将来の経営基盤も厳しくなる。こういった傾向から、今後も学生像や大学の方針と連動した学費戦略が不可欠になろう。