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【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「『社会的責任』世界の視点⑨:環境と予防原則」から

2011.9.13  日経産業新聞集の記事「『社会的責任』世界の視点⑨:環境と予防原則」から

「ISO26000」の環境と予防原則(予防的アプローチ)が焦点

コラムの著者 損害保険ジャパン理事CSR統括部長 関正雄氏が、前回触れたISO26000で特に企業側の視点で重要なポイントを説明している:

【予防原則(予防的アプローチ)の視点】

コラムでも説明があるように、ISO26000で環境に関する議論で焦点となった「予防原則(予防的アプローチ)」。1992年のリオ地球サミット宣言で、「(環境について)重大あるいは取り返しのつかない損害の恐れがあるところでは、十分な科学的確実性がないことを、環境悪化を防ぐ費用対効果の高い措置を引き延ばす理由にしてはならない」という言葉に出てくる。科学的証明を待って予防対策を施すことはほとんどの人が効果が薄いと考えるだろう。これが予防原則だ。

コラムの例:

▶地球温暖化:実際、その原因に人類の活動がでの程度あるいは100%関与しているかどうかの科学的な論証は未だ出来ていないし、複雑なメカニズムを解くのは困難である。しかし、原因が100%追求できない状況でも予防を行うものである。

▶遺伝子組み換え食品の安全性:革新的な技術のリスクと利便をどう考えるかが単純でない例。遺伝子組み換え技術で、将来の食糧不足による大量餓死を防ぐために、食糧の生産性を飛躍的に向上させる技術とみることもできる。

【各国政府の政策指針としての取り組み】

  • 欧州では、リオ宣言後、環境の政策指針として取り入れている。2005年にフランス憲法(環境章典)として明記。
  • 日本では、2006年第3次環境基本計画で政策原則として明記。
  • 米国・カナダは、科学的根拠重視の姿勢で、予防原則に反対。

予防原則は、欧州各国、消費者・NGOの圧力により、環境原則以外にも消費者の安全・健康保護の原則としてもISO26000に明記された。

【予防原則の是非論から活用法議論へ】

今や予防原則の是非ではなく、有効かつ賢明な活用法をめぐる議論に移行しつつある。企業としても、日ごとの実践の知見をステークホルダー(利害関係者)への主張も含めて共有し、議論を積極的にリードする立場となってきている。clover


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「眼光紙背:被災地で出会ったプロ」から

2011.9.6   日経産業新聞の記事「眼光紙背:被災地で出会ったプロ」から

「被災地だから仕方がない」の甘えのないプロ

コラムでは、二人の被災地でのプロ意識を感じたエピソードが紹介されている。一人めは、ガソリンスタンドといっても宮城県南三陸町の仮設給油所での出来事である。初老の男性が給油してくれた。がれきの中ぽつんと立ち、建屋も看板もない。でも、丹念にコラムの著者のクルマの窓を拭き、手の届かない場所は脚立に乗って作業。「そこまでしてくれなくても」と思ったときに、その男性の真剣な表情に気押されたとのことである。手書きの几帳面な字の領収書が印象に残る。

二人めは、避難所とボランティアの宿泊施設を兼ねたホテルの若い案内係。キチンと制服を着た彼女が、ごった返すホテルで、「早朝に出発するから朝食はいらない」と言うと、「それならおにぎりを作らせる」と返事。「おにぎりは傷むからいいらない」と断ると、「それならパンを用意する」という返事。宿泊料はボランティアには格安。だが、顧客に最善を尽くして満足してもらうプロ意識がそこにあったという。

「被災地だから仕方がない」という甘えはなく、厳しい職場環境でありながら、自分の仕事を全うしようとする姿があった。まさに心打たれ、頭が下がる思いだ。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「眼光紙背:どんぶり勘定の増税議論」から

2011.9.9   日経産業新聞の記事「眼光紙背:どんぶり勘定の増税議論」から

復興費用による増税ならコスト比較議論があって然るべき

コラムの著者に私も同意したい。政府の税制調査会の議論で、定性的なモノ以上に定量的な比較情報が欠けているとの指摘だ。

例えば、福島第一原子力発電所の処理についての比較

①同原発から3キロメートル以内の土地は長期間借り上げ、それ以外の区域は除染

②除染ではなく、半径20キロメートルの警戒区域は立ち入り禁止とし、その土地を買い上げ住民に補償する

この①、②のコスト比較、実施可能性は行ったのか

原発再稼働の比較

③危険であるから停止:津波や地震、テロなどの過酷事故の対策費

④電力コストを抑えるため、ストレステスト後の再稼働を急ぐ:新エネルギーにかける対策費や開発費

③、④を比較した上で安全対策、事故補償費などを加味して、発電コストベースでの比較はあるのか

 

増税は、国民の血税であり、負担を求めること。それならば、冷静なコストの比較論議が必要ではないかという指摘である。第2復興期のこの時期だからこそ、最小費用で最大効果の視点で論議がほしい。sign03


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「三浦俊彦の目:ニッチャー戦略」から

2011.9.8   日経産業新聞の記事「三浦俊彦の目:ニッチャー戦略」から

ニッチ市場に絞り込むのは、ブランドの維持が重要

コラムの著者 中央大学商学部の三浦俊彦教授は、ホテル事業と自動車製造業でニッチャー戦略について触れる。

【東京の高級ホテルの”御三家”と”新御三家”の差異】

  • ”御三家”(ホテルオークラ、帝国ホテル、ホテルニューオータニ)と1990年代の”新御三家”(ウェスティンホテル、フォーシージンスホテ椿山荘、パークハイアット)との差異は、客室の数。前者は1000室前後、後者は500室以下。
  • 2000年代の「コンラッド」、ザ・リッツ・カールトン」、「ザ・ペニンシュラ」も200から300室。
  • 絞り込みは最高級顧客へのもてなしを考えターゲットを捉えやすい。多くの客室を埋めるためにディナーショウや料理教室などの多様な展開は絞り込みでは不要

【ニッチャーの極意はブランドの維持】

  • ただし、高価格帯に絞れるが最高品質のものを提供しても、それに見合う高額な価格を顧客が払うために、ブランド力の維持が不可欠。
  • 自動車でポルシェがブランドを守るために必ず専売店を用いるといったルールがある
  • 一見楽そうなニッチャー戦略。だが、ブランド力の維持には大きな努力が必要。happy01

【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「グローバル企業の特許戦略⑤DBJキャピタル」から

2011.9.8   日経産業新聞の記事「グローバル企業の特許戦略⑤DBJキャピタル」から

自前主義ではグローバルな特許市場に対応できない

コラムは、DBJキャピタルの取締役当時部長 山口泰久氏のインタビュー記事である。同社は、日本政策投資銀行系で、ベンチャー企業のIPO支援や特許戦略などを支援する。山口氏は、このブログの著者松本とともに神奈川県産業活性での産学連携活動を一緒に行っている。

山口氏のインタビューから重要な特許戦略をピックアップしてみよう。

【グローバルな特許流通市場】

  • 日本企業の特許戦略に欠けているモノ
    • 自前主義が強く、保有する特許を市場に売却したり、事業展開で必要な特許を市場から調達する意識が浸透していない
    • 特許庁の調査では、製品やサービスに活用していない未利用件数の比率が2006年~2009年まで約50%で推移しており、改善の傾向はない
    • 保有していればいつかは使うという認識がある。しかし、使わない特許を積極的に市場に提供する方が有意義である
  • 欧米での特許売買
  • 特許だけを売買する非メーカーが存在。米アカシア・リサーチなどもその例。
  • 市場ニーズで必要とする特許を徹底調査し、特許を探索して顧客企業に売る
  • 特許流通の担い手となる企業
  • 日本のような自前主義では知財戦略で後れをとる
  • リーマンショック後の限られた費用の中で特許を武器にするためにも、特許を市場から調達する文化も必要
  • 大企業と中小企業の知財戦略
  • 大手に限らず中小企業もグローバル展開を迫られている現状で、知財面での支援は手薄である
  • 大企業が率先して「特許流通市場」を活性化しないと、中小企業の事業展開にも影響が出る。
  • 大企業の特許が中小企業の展開での参入障壁にもなっているが、TPOに応じてライセンス供与も必要
  • 大学発の特許流通は
    • 日本ではTLO(技術移転機関)が苦戦。
    • 要因は、大学が常に売り手の視点にあり、購入する目線がないからである
    • 特許競争力を総合的に分析して自らの特許を有効化する必要もあろう

  【日本の特許流通市場のイメージ】

  • 欧米型パテント・トロールの問題もあるが、それ以前に市場が求める特許を掘り起こして流通させる”特許管理会社”を増やすことが先決と思う