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【ヒット商品】ネタ出しの会  3. 発想編 「ヒット商品ネタ」を生みだす8つのトレーニング⑤「1つ上」にある考えを見つけよう!

 これまでは、「どうして?」を繰り返し、どちらかといえば、概要から詳細、マクロからミクロといったブレークダウン(分解)に向けてアイデアを拡張してきました。さらに、「発想の地平線」を見出すことでもありました。

大きく視点をあげてみよう

 今度は逆にボトムアップ(構築)に向けて、「発想の高度」を見出しましょう。

3-5

 「発想の水平線」まで到達したいくつかのアイデアをまとめて、持ち上げる上位概念があれば、それをまたブレークダウンすることで、別の次元のアイデアを得ることができます。

 ここでのポイントは、上位概念が必ずしも存在するものでないことです。上位概念が存在すれば、飛躍的にアイデアが広がります。もう一つのポイントは、上位概念を支えるアイデアが多いほど、包み込むアイデアが多くなり、拡張度が高くなります。ここでは「発想の高度」と呼ぶことにします。発想の高度が高いと、多くのアイデアを生みやすくなります。

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」企画を例に上位概念を取り上げてみましょう。

 チョコドリンクは、チョコレート、ドリンクのどちらが上位でしょうか?結論は、企画者が提供したいものが上位概念になります。発想の地平線で広げていった結果、チョコレートドリンクになった経緯があり、チョコレートが主題であったので、今回はチョコレートと関連する情報が上位概念となります。

 上位概念は、チョコレートを提供することになった経緯にも影響されます。

 自然食品で、誰にでも親しまれ、安定的に供給でき、健康にも良い食品というものがチョコレートを使った商品の上位概念です。逆に、自然食品で、誰にでも親しまれ、安定的に供給でき、健康にも良い食品はチョコレート以外にもたくさん存在します。コーヒーや小豆、大豆、小麦、米などです。チョコドリンクに類似商品で企画としてはインパクトに欠けます。しかし、豆乳や小豆、ライス・プディングといったものであれば、姉妹品としての系列化がはかれそうです。このように上位概念をつかむと、ブレークダウンして、別のアイデアに展開することもできます。

上位概念を探索する!

 上位概念が存在するかは、アイデアの前提条件とアイデアを具体化する意思で決定されます。

  • 注目するアイデアに前提条件があるか

 エジソンが実用化した白熱電球のアイデアも前提がありました。例えば、電気を通さない絶縁材料と電気を通す導電材料という考えです。電球内に閉じ込めた絶縁材料のガス、金具は導電材料といった具合です。また、白熱電球は、電気エネルギーを熱エネルギー(ジュール熱)、さらない光エネルギーに変換することが原理であることも前提でした。つまり、エジソンは、電球の実用化には貢献したのですが、電球そのものを生む出したわけではないのです。彼が有名になったのは、白熱電球の実用化を行うだけでなく、それを上回る、電気エネルギーの変換、伝送にあったのです。この場合の変換の対象は電気エネルギーから光エネルギーへの「恒常的な」変換だったのです。ろうそくや行燈に頼らず、いつでも光が安定的に手に入るもので、それを行うアイデアが重要だったのです。

 恒常的な光の獲得。そのために切れない、長寿命を保証する電球の実用化で有名になったのです。彼のアイデアは、光を放つフィラメントの抵抗に着目し、寿命を千倍以上に伸ばしたことなのです。このようにして、長寿命電球という、一つの小さな発明が、電力を使う機器の事業と伝送する事業を約束することになったわけです。エジソンには、この上位概念への挑戦という野心があったわけです。

  •  隠れた暗黙の前提や背景は、インフラストラクチャやプラットフォームの存在がないか

 白熱電球を利用者の視点で見ると、背後に電力システムというインフラストラクチャがあることがわかります。上位概念は、図では上位にありますが、多くのアイデアを支えるプラットフォーム(土台)の役目になります。

 アイデアは既にあるインフラストラクチャやプラットフォームを基礎にできていますが、新規発想型の中で極稀にインフラストラクチャやプラットフォームの発想そのものである場合があります。このような上位概念そのもののアイデアは、別のアイデアの宝庫でもあり、ヒット商品の母体となる発想です。

 エジソンの例で説明しましょう。現在の電力会社は大規模ですが、最初の設備は、発電機と送電線、変電器、そして、電気を消費する様々な機器から構成されたインフラストラクチャだった訳です。事実、エジソンは、自ら電力会社を作り大成功を収めたのです。

  • インフラストラクチャやプラットフォームの正体は

 では、ナゾかけではないですが、インフラストラクチャやプラットフォームはどうして生まれてきたのでしょうか。答えは、利用者やお客様の共通の要望、ニーズを具体化したものが、インフラストラクチャやプラットフォームです。エジソンの電力会社の必要性は、利用者やお客様にはわかりません。しかし、日常の業務や家事といったことを、自分の力以外でやってほしいといった共通のニーズがあったのです。この要望を満たすために、様々な電気製品や家電商品が必要であり、これらを動かすために電力会社が必要だったのです。

 発想の高度は、生み出すアイデアの量だとも言えます。上位概念で支えられているアイデアが、大きければ(高度が高い)、新規に生み出すアイデアも増えるからです。

上位概念は抽象的か

 実現した電力システムは具体的ですが、エジソンの時代には、抽象的なアイデアであったとも言えます。電気の応用も当時は、白熱電球や蓄音機、モーターといったものでした。現代のように電気がないと生活できない環境ではなかったのです。当然、エジソンのアイデアも空想の一部といも言われたでしょう。このように、上位概念が見つかったとしても、具体的な応用やニーズにこたえるサービスにするには、技術やスキル、流通などが育っていなければなりません。空想ではなく実用にする技術やスキル、流通が必要なのです。

 ヒット商品の生み出すことは、自分の発想力のアップと技術やスキル、流通の他者の力があって、さらにワクワク感という意思が働く必要があるのです。成功確率が低いのもそのためです。

 では、自分の発想で上位概念に挑戦しましょう。


【ヒット商品】ネタ出しの会  3. 発想編 「ヒット商品ネタ」を生みだす8つのトレーニング④Let's challenge!!

問題

(1)プラクティス3であなたの企画の中を分解して、注目する2つの項目を出してください。出した項目で、(AA’)×(BB’)(CC’)を考えてみましょう。

(2)CまたはC’で、視点を変えて、アイデアを広げてください。ここでは5項目程度展開してみてください。

進め方 CまたはC’以外にA’×BA×B’についても同様の検討を行ってアイデアを拡げることもできます。この段階では絞らずに拡げてください。

回答例

(1)             メリハリをつけるための休憩が必要である

(2)             「気分転換グッズ」、「カップにクイズ、回答はウェブ」、「携帯スケジュールお知らせ体験サービス」、「非日常体験旅行プレゼント」、「カップで五―(GO!)、5カップで、出来るビジネスパーソン限定文具プレゼント」など

アイデアノートを使っていますか?

 前回ご紹介した左右でアイデアを転換するノートは活用していますか。(AA’)×(BB’)(CC’)のように展開が多くなると、頭の中だけで検討するには限界になっています。

 今回のように、表やマスといった内容が増えると、手つかずに残っている項目も、後でアイデアとして活用できることがあります。

 また第2章の「発想の触媒」を活用して、アイデアを拡げることに挑戦してください。

NEXT Step

 数多く出すアイデアの1つ1つを見ると共通する大きなアイデアが浮かんでくる場合があります。このような上位のアイデアが見つかれば、さらに多くの関連したアイデアを含めて拡げることができます。

例 「おとなのチョコドリンク四季限定版」で、「メリハリのある休憩」に対応することは利用者の何を満足することでしょうか。コーヒーやお菓子といった飲食だけでない、満足感にヒントが隠されています。


【ヒット商品】ネタ出しの会  3. 発想編 「ヒット商品ネタ」を生みだす8つのトレーニング④アイデアを変幻自在で考えよう!

 1.説明したA×B→C、A→A’を組み合わせて、(A→A’)×(B→B’)→(C→C’)といった複合的な発想の仕方でアイデアをさらに磨きましょう。

A⇒A’やA×B⇒Cを拡張しよう

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」企画を例に考えます。この企画の「おとな」の概念を分解すると、ここでは20代後半から50代までの男女で、オフォスを利用する人となります。仕事をするためにオフォスに来る、過ごす、打ち合わせする、休むといった日常があります。また、おとなはそれぞれ嗜好が違います。大量消費が前提の商品企画を行うには、大多数の嗜好に合わせることになります。多品種で少量が前提であるなら、個々の嗜好から、口コミ的に広げていく戦略があります。

 ここでは、(上司の指令?で)大量消費が前提の商品企画を考えることにしました。

 図のように、購買者のAA’、販売場所のBB’を掛け合わせてみました。

 

A

A’

おとなの

バリバリできるビジネスパーソン

B

オフォス

仕事の場であって、成果が求められる

常に活性化した状態である

B’

休憩場所

喫煙室、食堂、自動販売機設置場所、休憩室である

メリハリをつけるための休憩が必要である

 先ず、AA’として、「おとなの」からイメージできるものとして「バリバリできるビジネスパーソン」としました。BB’として「オフィス」から逆転発想で、オフタイムの「休憩場所」としました。A×Bは、「おとなの」×「オフィス」となります。どう解釈するかにもよりますが、「仕事の成果を重視する」ことをCとしました。さて、A’×Bでは、成果が、出来るビジネスパーソンの場合はどうかという仮説で、「常に活性化している」としました。同様に、A×B’では、「喫煙室、食堂、自動販売機設置場所、休憩室である」といった場所となります。最後に、A’×B’は、メリハリ(活性状態と休憩でともに効果がある状況)で、休憩を積極的に取り入れることを重視することが見えてきます。

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」はどうやら、メリハリをつけるための休憩を満足させる必要がありそうですね。メリハリをつける休憩は、気分転換、リフレッシュの場と品物が必要であると考え、アイデアとして「おとなのチョコドリンク四季限定版」に、キャンペーンとして、気分転換グッズをおまけにつけることを考えました。!

利用者の視点で再チェック!

 さて、「メリハリをつける休憩」に対して気分転換グッズは妥当なアイデアでしょうか。ここで、「どうして?」をさらに行って、妥当なアイデアであるかを検証しましょう。下表はまだ途中ですが、気分転換グッズ以外にもアイデアがありますね。

4-1

 自分の発想で、プラクティスに挑戦してみて下さい。


【ヒット商品】ネタ出しの会  3. 発想編 「ヒット商品ネタ」を生みだす8つのトレーニング③Let's challenge!

問題

 プラクティス2で調査や確認が必要である項目について、直接あなたのアイデアでお客様となる(利用者となる)側の視点で、プラクティス2のリストに気付いた点を追加してください。追加したことから、アイデアをイメージはどのようなものになったかメモをしてください。

進め方 視点を変えるのは、お客様側だけでなく、あなたのアイデアを成り立たせる、材料や原料、基本的な枠組みといった仕入れ側の視点でも検討してみてください。

回答例

オフィスワーカーを購買層としたときに、「おとなのチョコドリンク四季限定版」を自動販売機、社内購買、委託販売ルートで供給する。

視点は180度ではなく、360度で

 視点を変えるために3×3の曼荼羅の図を使う方法もあります。例えば、「おとなのチョコドリンク四季限定版」の場合、以下のような視点があります。「おとなのチョコドリンク四季限定版」を提供する場合、仕入れ→製造→お客様のような一直線は180度の視点です。さらに、この流れに対して管理や情報、材料、役割などを入れた360度の視点を入れると、発想がさらに広がります。

材料、入手情報は何かという視点

加工、編集、製造の視点

お客様は誰かという視点

仕入れ(材料、情報の入手先)の視点

「おとなのチョコドリンク四季限定版」

お客様(利用者)の視点

仕入れ(材料、情報の入手先)の管理の視点

加工、編集、製造の管理の視点

お客様(利用者)の管理の視点

NEXT Step

 アイデアを具体化するときに、第2章で練習した新規発想型(A×BC)、改善発想型(AA’)の何れに軸を置くかを検討しておきましょう。

例 「おとなのチョコドリンク四季限定版」では、改善発想型でラインアップを増やす。ターゲットを変えた派生商品を考える際は新規発想型で挑戦する。


【ヒット商品】ネタ出しの会  3. 発想編 「ヒット商品ネタ」を生みだす8つのトレーニング③視点を変えて気付きを得よう!

 視点というのは面白いものです。人間が情報を手に入れるために8割以上が「視覚」に頼っているといわれています。確かに日常生活を考えても、見ることをのぞくと、かなり情報が減ることがわかります。中には、生活できないと考える人もいるでしょう。面白いことに、視覚も人によってみる方向や見方が違うので、同じものを見ても、微妙に異なることがあります。視点とは、このような差異を指しています。

他人の視点を知ろう!

 劇的に視点の差異を感じるためには、対局の立場に自分の視点を変えてみることです。プラクティス2で「発想の地平線」に達した後、いくつかの検証が必要であることがわかりました。「夏向けチョコドリンク」企画では、提供者つまり売り手の立場で、アイデアを見てきました。今度は視点を変えて、購入者つまり買い手の立場で考えてみます。

 同じチョコドリンクでも、買い手の立場でみると、どうやら印象が違うようですよ。暑いところから帰社した営業マンは、甘いチョコドリンクは敬遠しがちでしょう。汗を一杯かいて、甘さよりも水分補給です。一方、社内の事務職の彼女は、足下の冷えとの戦いで、冷たいドリンクは敬遠します。どちらかというとちょっとぬるめでゆったり出来る飲みものということになりますね。さあ、違った視点で見たチョコドリンクはどう見えるでしょうか。

 そう、このままではどちらの要求にはあいません。ということは、一方の要求にあうようなドリンクにチョコレート味でいくか、オフィスに合った、ウォームドリンクでいくか、それとも両方の要望を満たす第三のアイデアを出すことになります。

 両方をとると、外勤と内勤で何が共通でしょうか。また、一方ずつで異なることは、買い手の視点では何でしょう。共通点は、両者ともオフタイムであり、ほっと一息つく時間で満足させるものです。外勤者は、暑い身体を回復させたい、内勤者は、こわばった身体をほぐしたいといったところでしょうか。ともに、チョコレートの内容よりも状況にあった飲み物が欲しいということになります。あえて、アイスコーヒーや冷茶、水、炭酸飲料を選ばずに、夏向けチョコドリンクを選んでくれる理由はここにはないことがわかります。つまり、買い手に強い動機がないと夏向けチョコドリンクを買いません。視点が変えると、不思議なくらいアイデアを支えていたものが消えて、違った気付きが出てきます。他のドリンクを押さえて、チョコドリンクを選んでもらうには、といった視点です。

 もう一つ大事なことは、自分がその視点に物理的に立ってみることです。あなたが、会社内の休憩室や自動販売機の前に立ったとき、チョコドリンクがそこに売られていたら、手に取るでしょうか。その感覚が大事です。

一石数鳥はないか?

 この段階ではアイデアを絞りこんではいません。ですから、アイデアに他のアイデアを追加する、組み合わせる、一石二鳥も結構です。「夏向けチョコドリンク」企画では、まだまだ選択できることがありますね。

 調査データを見てみましょう。インターネットで調査してみると、「朝に職場の自動販売機を利用する人は53.6%、購入する飲料は「コーヒー(55.8%)」「お茶(41.3%)」の割合が高かった(複数回答)。朝に「コーヒー」を選ぶ人は女性(43.2%)より男性(62.7%)に多く、女性では「お茶(54.1%)」が1位。「紅茶(29.7%)」「水(18.9%)」も上位に入った。」との記事を発見。意外と職場の自動販売機が活用されていることがわかりました。さらに、飲料以外の調査を見ると、男性はカップめん、女性は菓子であることもわかりました。

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アイシェア TYPE リサーチのウェブサイトのデータより抜粋

 視点を変えて、ほっとした時間を過ごすといった要望にこたえるため、「夏向けチョコドリンク」企画では、「おとなのチョコドリンク夏季限定版」、「おとなのチョコドリンク冬季限定版」として四季に対応できるラインナップとし、「おとな」とすることで、ターゲットの購買層をオフィスワーカーとしました。確かに一般向けのニーズはあるのですが、最初に商品展開をするところをオフィスにしたのです。また、職場への食品提供が、自動販売機だけでなく、オフィスグリコのような外部販売、社内食堂といった販路も調査することにしました。アイデア自身は絞り込ます、流通過程やターゲットの購買者を明確にしたのです。

 ここでのポイントは、一石数鳥。アイデアを膨らませて、商品として具体化するときに、いくつかの課題やニーズを一気に解決できないかということです。限定季節展開は、季節のニーズに合わせ、ホット、コールドの両方に対応できることや飽きを避け、商品の改善時期を明確にすることも示せます。おとなであるから、甘みを抑え、リフレッシュにあった菓子感覚のドリンクとしました。

 今度はあなたのアイデアで視点を変えて、よりアイデアのイメージを明確にしましょう。