2012.9.11 日経産業新聞の記事「実践!ワークライフバランス(WLB)経営④:管理職の意識を変える」から
WBSの抵抗勢力、管理職にどう立ち向かうか
コラムの筆者 渥美由喜氏(東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長)は、WBS経営で一番の抵抗勢力となりやすい現場の部課長クラスへの対策について述べている。
【粘土層である管理職】
いくらレクチャーしても染み込まず、トップダウンで進めようとしても抵抗勢力である管理職が頑なな粘土層のように立ちはだかるためWBSが浸透しないことが多いという。
粘土層でも、実は水溶性の「かみ粘土」と固着している「かた粘土」があるという。「かみ粘土」の場合は、自分は超ワークライフ・「アン」バランスな働き方をしてきたのに、ワーキングマーザーをしている愛娘などの肉親の言葉に「溶かされて」、良き理解者になる。このような人を味方にすることもWBSを推進する上で重要だという。
ただ、「かた粘土」は厳しい。手を変え、品を変え、自分自身を省みて「気付く」きっかけ作りをじっくりと提供するしかないという。
【窮場危機とJFK】
渥美氏は、過重なワークが恒常化しており、時間的に見たライフが窮乏しているような職場を「窮場」と呼んでいる。まさに窮場危機で、これを救うのはJFK(ジョーク、不安、感動)という。
○ジョーク
かた粘土には、ジョークや風刺で気付きを与えるのも効果的だという。例えば全社員でWLBの川柳や標語入りのポスターを募る手法を渥美氏は企業に薦めてきたという。
- 「寝食忘れ家庭忘れて忘れられ」
- 「ワークとライフがバラバラざんすと嘆く妻」
- 「減ってうれしいのは体脂肪率と連日の残業」
といった川柳やポスターを社内の各所に掲示しておくと、「たまには早く帰宅してみようか」といった実践につながるという。
○不安
「このままでは、将来、まずい事態になりかねない」と不安にさせるモノ。渥美氏は、中高年の男性を説得する殺し文句として「3大ホラー」を取り上げるという。
- 介護ホラー:介護と仕事の両立は難しい。誰も自分の面倒を見てくれなくなるというホラー。
- 熟年離婚ホラー:仕事一辺倒で突然、奥さんから三行半を渡されるホラー。
- マネジメントホラー:健康を損ねたり、部下を病気に追いやることで、仕事は出来るがマネジメントは出来ないという評判になるというホラー。
これは一種の脅しだが、これが誘因となって自らの行動を改めていく。
○感動
JF(ジョークや不安)は、気付きの一歩にはなるが、促進力としては感動が有効だという。感動は、心の奥底から人を勇気付け励ますからである。
かた粘土層である部課長をこれらの方法で徐々に「溶かしていく」ことで、WBS経営を進めていくしかないという。