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【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「眼光紙背:危機下でも立法の手続き守れ」から

2011.5.31  日経産業新聞の記事「眼光紙背:危機下でも立法の手続き守れ」から

震災を理由に法制度を無視した政治圧力は許されない

コラムの著者は厳しい。今回の政府の2つの要請に問題ありとの言だ。

1つは、中部電力浜岡原子力発電所の停止要請。もう1つは、東京電力に融資している金融機関の債務放棄に対する圧力だ。共に、監督官庁の大本である内閣が発する「行政指導」の臭いがする。

これは、議院内閣制の我国にとって、行政府の要の内閣が監督をまたまた指導するという自己矛盾をはらんでいる。問題は、やり方で、停止要請や債務放棄をきとんと議論して法制度に照らした法案を検討していないことだ。政治的圧力を国民の総意と勘違いすると大変なことで議会制民主主義の危機ともなる。

超法規的措置であっても米国議会は、官僚や民間の知恵を結集して法案を提示して討議が始まる。そういった意味で、我国は危機に甘いのかもしれない。despair


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「マネジメントの肖像③ヘンリー・フォード」から

2011.6.1  日経産業新聞の記事「マネジメントの肖像③ヘンリー・フォード」から

大量生産の創始者フォード

コラムの著者 ブース・アンド・カンパニー岸本義之ディレクターが示す今回の人物は、ヘンリー・フォード (▶ 参考)だ。①で紹介したテイラーの提唱した科学的管理法の実践者かもしれない。 470px-Henry_ford_1919

T型フォードで有名のフォードだが、元はデトロイト・エジソン・カンパニーの電力供給管理技術者だった。安定した電力供給のお蔭で、待機時間が彼の技術アイデアの創作時間だった。最初の実用ガソリンエンジンも発明した。

フォードの優れているところは、当時食品加工工場などで導入され始めた高架懸垂車を利用した「ライン製造」を発電機の製造に応用したことだ。ライン製造の原理は、一人がすべてを組み立てることではなく、部品に分解して、手分けして、出来るだけ少ない動きで、製品を製造するものだ。テイラーのいう、労働者の動きを最小限に抑え徹底した方式だ。

ただ、晩年になって、ライン製造で自動車業界で成功はおさめたが、巨大化した組織的な問題、特に人材管理に苦労する。

日本の松下幸之助氏もフォードの生産管理に触発された。ただ、フォードとの相違点は、会社は単なる生産の道具ではなく、社会や個人の便益のための存在と考えたことだ。倫理を松下氏は企業に持ち込んだのである。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の特集記事「メードバイJAPAN、第4部震災で試される底力①」から

2011.5.31 日経産業新聞の特集記事「メードバイJAPAN、第4部震災で試される底力①」から

復興の原動力は現場の人のチカラ

コラムでは、東日本大震災で未曽有の危機を乗り切ろうとしているIHIと新日鉄を事例にあげている。両社とも、現場の能力が最大の震災復興の原動力になっているいることを知りぬいている。

IHI(石川島播磨重工業)の元社長 土光敏夫氏の強い現場力を育てる極意が、今も活かされ、今回の震災復興に大きな力となった。

土光氏の極意

  • カネとモノは有限、ヒトの力は無限

IHIの主力工場である相馬工場。航空機エンジンの部材を一手に引き受ける世界屈指の工場だ。その主役は、世界一のリードタイムを誇る女性パートのチカラ。現場改善とその能力を見抜き権限委譲する幹部と女性パートを軸とする現場がリンクして大きな復興力を生んだ。通常は半年もかかると言われた工場の完全復旧を2カ月でやり遂げた。

新日鉄会長 三村明夫氏の極意

  • 現場の失敗を許す。トータルの打率で評価せよ

釜石製鉄所を持つ新日鉄は、震災1カ月で再稼働した。現場の所長が権限を持ち、本社よりも現場が先に動くことで対処。他の拠点がすぐに保全チームを作り、派遣。そして復旧工事。三村氏も実は03年の名古屋製鉄所のガス爆発事故での現場への権限移譲が早期復旧につながった経験を持つ。極意にある失敗を許し、良いところを認めてやれば、現場の力が発揮できるという。

今回の震災の復興は、ITやシステム、道具も必要だが、現場の発想を活かすところにヒントがある。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「哲学で拓くBIZテク⑮:サンデルに学ぶ『倫理力』」から

2011.5.31 日経産業新聞の記事「哲学で拓くBIZテク⑮:サンデルに学ぶ『倫理力』」から

相手を人間として尊重し相互行為で会議を合意の場に

コラムでは、アメリカの政治哲学者マイケル・サンデル(▶ 参考)が唱える「コミュニタリアニズム」と企業倫理の関係を説いている。マイケル・サンデルはNHK番組の「ハーバード白熱教室」でも有名な政治哲学者だ。

企業が自らの存続のために利潤追求を目的とする中で、企業を守るがゆえに利益が出るような方向で意思決定をしがちです。その判断の結果が、違法であったり、倫理的に問題をはらむケースもある。このような誘惑に負けないために倫理的に正しい判断とは何かを考えてみる必要がありそうだ。

マイケル・サンデルは正しい基準には3つあるという:

①「功利主義」:最大多数の最大幸福を実現することが「正しい」という主張

⇒出来るだけ多くの幸福が得られるのが正しいということになり、利益を上げられるなら、多少の不正があっても良いとなってしまう

②「リベラリズム(自由主義)」:個人の自由や権利を保障することが「正しい」という主張

⇒自分さえよければ良いという結論になりがち。経営者にも社会全体を考えてもらうということは望めない

③「コミュニタリアニズム(共同体主義)」:共同体の美徳を守ることが「正しい」という、マイケル・サンデルの主張

⇒個人の自由を守ることは大前提。共同体の価値にも目をむけよという。これは利益の追求や利己主義を越えた、いわば社会に対する愛着や感謝の念というべきもの。共同体の美徳の根拠は、どんな個人も企業もまわりに支えられ、生かされており、これに対する感謝の念を忘れてはいけないということだ。

サンデル教授の「コミュニタリアニズム」は企業の倫理力として活用できそうだ。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「変革期の経営戦略論:変化の時代(下)」から

2011.5.26  日経産業新聞の記事「変革期の経営戦略論:変化の時代(下)」から

変化適応力を得るチャンス

 コラムの著者 ボストンコンサルティンググループ パートナー森健太郎氏が今回指摘するのは、企業の「変化適応力」の日本企業の共通の課題だ。

  • 既存事業の収益力

国内事業の収益性が、欧米企業に比べ低いこと。成熟市場であっても、欧米企業はしっかり儲けている。そこには、気付きによる創意工夫と努力がある。

また現場が強いことは反面、コーポレート部門のリーダーシップが弱い。この弱さが業界再編を他国に比べ遅くしている。

  • 新たな収益源の開拓

新興国への展開の出遅れは否めない。サプライチェーンの観点から、分散での対策には新興国は外せない。長期のメガトレンドでは、日本の技術や経験を生かせる分野があり、中長期計画では自社にとっての重要トレンドを選択し戦略を練るべきだ。

  • 変化を前提とした経営力

欧米のパワーゲームに対して、日本企業は、臨機応変さとチームワークで、対抗してきた。このお家芸を、今後も活用できる戦略かどうかが問われるところ。

以上に示したように大震災は災害ではあるが、見ようによっては日本企業の転換点を迎える重要な時期を具体的に示したと考えることもできる。