1.で説明した「10の問い」で商品アイデアを点検していきます。
単純な質問、でも答えは?
第1の質問「顧客は誰か」。単純ですが、意外に曖昧にして計画を進めてしまいます。陥りやすい答えとして、エンドユーザを答えてしまうことです。あくまでも、顧客は、あなたの商品を買い、対価を払ってもらう直接顧客です。
では、商品案に対して、直接顧客を確実に、しかもいくつかの顧客候補を仮説と検証を行うにはどうすれば良いでしょうか。
この問題を解決するために分析法としてよく使われる考え方があります。価値連鎖(バリュー・チェーン)という考え方です。これは、AがBに商品を販売することで、AはBから対価をもらう、つまり、AはBに価値を提供することで、対価を逆にもらうことになります。さらにBはCにAからの商品に付加価値、例えば加工してCに販売すると、Bは、Cに加工した商品とう価値を与え、その対価をBはCからもらうという連鎖が出来上がります。価値の流れは、A→B→Cで、対価の流れは、C→B→Aと逆方向に流れます。価値の連鎖を追えば、Aの直接顧客はB、Bの直接顧客はCとなります。AからみてCはエンドユーザとなります。
自動車業界の場合、図のようなバリューチェーンが出来ます。自動車業界というと、メーカを頭に思い浮かべますが、自動車メーカ自身は、販売先としてディーラ(販社)を通じてエンドユーザに自動車を提供しています。つまり、メーカの直接顧客は、ディーラなのです。同図のコンポーネントとは何でしょうか。これはもともとメーカが製造していたユニットやモジュールといった一固まりの部品で、例えば変速機のようなモジュールを専門的に製造するメーカです。自動車メーカから見れば、製造の一部を外部に委託製造することでコストを下げるもので、アウトソーシングとも言われます。このように、顧客の業務の一部を受け持って事業を行う形態もあり得ます。アウトソーシングの顧客は、この場合自動車メーカとなります。
バリューチェーンを使って、顧客を考える場合の注意点として、最終的な1つの商品を受け取るエンドユーザから考えていくことです。図で言えば、右から左の対価の流れに従って考えることです。逆に左から右へ価値の流れで考えていくと、エンドユーザや直接顧客が広がりすぎて、絞れなくなります。
もう一つの陥りやすい誤りとして、ターゲットとする顧客イメージが広すぎて把握できないというものです。広すぎる場合は、いくつかの顧客候補に分けて、それぞれの顧客候補に対して商品がどのように需要を満たすかを確認しなければなりません。
また、B2B(企業間取引)の場合、顧客企業の業界が大きく誰がターゲットなのか自社の立場によって異なる場合もあります。図のように、ITのサービスを商品とする場合、IT部材として考えるか、ITサービスを特定の会社のソリューション(解決サービス)と考えるか、さらに顧客企業のアウトソーシングと考えるかで、価値の流れと対価の流れ、収益の取り方(収益モデル)も変わってきます。顧客は誰かのよって、売る商品は同じでも、対価の取り方が異なることに注意してください。
さらに、商品を製造することが強い企業やコア技術を持っている企業にも陥りやすい誤りがあります。それは、顧客の視点を忘れて、先ずは商品ありきで考えてしまう、プロダクト・アウトの考え方です。プロダクト・アウトは開発や製造、販売といった企業で最もコストを抑え効率的に動ける活動を支持することから、想像現場での受け入れやすい傾向があります。しかし、顧客から見ると過剰な機能、複雑な操作といった商品の弱点を見せてしまうことにもつながります。これでは折角、売れる商品でも売れない状況となってしまいます。事業化のプロセス「10の問い」では、プロダクト・アウトのわなに陥らないためにも、対象となる顧客を明確にしているのです。
ロールプレイでの買い手は正しかったか
前回のロールプレイで、売り手の指示で顧客(買い手)を指定しました。買い手は、確かに商品の利用者や販売者であったのですが、直接顧客かエンドユーザではバリューチェーンで考えたように、売り方が異なります。場合によっては直接顧客に売るために、エンドユーザには、自社の商品は売れないこともあります。例えば、自社がメーカで、直接顧客が卸売であった場合などがあります。
では、プラクティスに進んで、顧客は誰かの問いに答えてみましょう。