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【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング⑦アイデアを図示してみよう!

 ここからは、アイデアを他者との交流によって具体化するトレーニング。具体化するには、アイデアを図に書くことが効果的。

図に書いてみよう

 絵の上手下手ではありません。ここで重要なことは、広がったアイデアを如何にうまく相手に伝えるかです。そのために、図だけではなく、説明も必要です。この後2回のプラクティスで、これまで広げてきたアイデアを具体的なイメージに固めていきます。最初に、アイデアに対する前向きな意見をもらうため、イメージを図解することから始めます。

 商品あるいはサービスとして仮説のあるアイデアを数個、選別します。これまで同様に、あなたがワクワク感を持って商品化したいアイデアを優先的に選びましょう。次に、発想の水平線に到達し、調査や検証をある程度終えたものを選びましょう。できれば、検証段階の意見も集約しておきます。「おとなのチョコドリンク四季限定版」企画では、カップドリックのイメージや販売の仕方などがこれにあてはまります。

 さて、図で説明するのに必要な内容は何でしょうか。

  • 全体と部分

 商品やサービスをイメージするのに最低限2つの図が必要になります。先ず、対象の商品やサービスを含めた全体の位置付けや流れを示す図です。「おとなのチョコドリンク四季限定版」企画では、チョコドリンクがこれまでの飲料と何が違うのか、お客様のターゲットはなにかを説明する必要があります。

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 次に商品やサービスそのものを説明する図です。特徴点なども記入しましょう

  • 価値とコスト

 図には直接書き込まない内容ですが、調査のデータは整理しておきましょう。お客様から見た価値です。また、その価格ですね。コストとしては、仕入れ、製造、販売にかかる費用を見積もっておきましょう。

  • 提供方法

 お客様から対価をもらうまでの流れです。製造業なら卸先、小売なら卸元などを考慮してください。意外と購入方法などが混乱すると商品のイメージが不明確であることに気付くはずです。

  • 系列

 対象としている商品やサービスにシリーズやラインアップなどがあれば、図に説明を入れましょう。

商品カタログをイメージしよう!

 商品カタログには、上にかいた内容をすべて取り込んでいることがわかります。カタログは販売員が使う道具であることから商品やサービスに関連した情報を効果的に掲載しています。ということは、アイデアを具体的な商品としてイメージする時は、商品カタログにかくことを考えれば良いですね。ただ、価格や機能といった不確定な部分については、周りや顧客候補の意見を聴きながら確定していくと考えてください。

 今回のプラクティスは、あなたの商品イメージを2枚の図にまとめる実践です。例にならって進めましょう。


【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング⑥Let's challenge!

問題

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」企画で、キャンペーンとしてお客様の社内巡回販売のアイデアを3つ出してみてください。

進め方: 大企業、中小企業と顧客の規模に応じて、販売企画を考えてみてください。

回答例

 大企業向けキャンペーン:社内食堂、社内購買などでキャンペーン試飲会を開催

 中小企業向けキャンペーン:オフィスグリコなどと提携し、キャンペーン販売

 コンビニキャンペーン:5点まで購入後、キャンペーンコードでもう一個。

上位概念を具体化するには?

 抽象的になりがちな上位概念ですが、具体化する手段はないでしょうか。最もよく使われる方法として、5W2Hで考える方法があります。つまり、What(何を),When(いつ), Whare(どこで), Who(だれが), Whom(だれに), How to(どのようにして),How much(どれくらい)で考えることです。こうすれば、抽象的な内容がいくつかの選択肢に分けられ、少しはアイデアが出易くなります。

NEXT Step

アイデアを共通の認識で討議することを次に考えましょう。そのためには、討議する相手と共通のアイデアのイメージが必要となりますね。そのための絵に描くポイントを考えます。あなたのアイデアや企画は、1枚の図にかけますか。

アイデアを図解するステップ:ざっと頭にあるあなたのアイデアを1枚の図に書いてみましょう。


【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング⑥上位概念からさらにアイデアを拡げよう!

 上位概念は、アイデアを支えるニーズやインフラストラクチャ、プラットフォームでした。一般的に抽象的です。実現が可能でないものもありえます。抽象的なアイデアを具体化して別のアイデアを得ることを考えましょう。

上位概念から再度アイデアをだす

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」で、「手軽に勤務時間でも息抜きができる場の提供」を上位概念としてみます。勤務時間で手軽とは?息抜きができる場とは?

 準備や気構えが必要な息抜きではないですね。手軽とは、思いついたときに「ふっと」できること。もちろん、ビジネスでのことですから、リフレッシュが目的です。チョコレートに限らず、コーヒーや喫煙、ちょっとしたおしゃべりなどがあります。また、お菓子などもあるでしょう。ストレッチ体操、読書もあるかもしれません。

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 何れにしても長時間ではなく、空き時間で、休息して、話をしたり、身体を動かしたりすることで、気分を転換します。忙しいビジネスの現場で、ほっとする場を提供すること。でも、意外に最近の職場では、こういった場が少なくなってきています。例えば、喫煙所は、徐々に全面禁煙と健康志向での企業が増えることでなくなりつつありますし、給湯室も、セルフサービスに。オフイスの自動販売機も節電で、わびしいものがあります。社員食堂も不況でコンビニエンスストアのアウトソーシングにかわり、エコ指向で、容器を回収する仕出し弁当の奨励といった「逆風」状態です。上位概念があっても、現実的なアイデアでは、どれも実行に否定的な結論です。発想の触媒を思い出しましょう。例えば、「逆転」です。食堂を昼休みだけでなく、一時的に憩いの場にすることです。社員食堂をカフェスタイルやバーにするというアイデアです。さらに、社員食堂からコーヒーやリフレッシュ用のお菓子などの出張販売を行うというアイデアです。これなら空き時間の会議室がリフレッシュルームに変身できるかもしれません。

上位概念と出てきたアイデアを組み合わせる

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」では確かに商品アイデアでしたが、上位概念を入れると、足りないものも見えてきます。リフレッシュの場所などもそうです。このように、上位概念に沿ったアイデアに具体性があれば、元のアイデアと組み合わせて、新たなアイデアを出すことができます。

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」企画では、上位概念も考慮して、キャンペーンとしてお客様の社内巡回販売を行うこととしました。キャンペーン期間中の従業員の反響や意見を聞くのも狙いです。

 上位概念が抽象的であり、実現が現在困難である場合、元のアイデアを拡げることは困難です。しかし、アイデアノートには、上位概念をメモしておきましょう。将来、実現が可能となる技術などが開発されると、アイデアは飛躍的に広がるからです。

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 当時は空想と考えられていたもので実現したものに「イリジウム計画」があります。この計画は、携帯電話の国際電話版として衛星を使っておこなうもので、米国のモトローラ社が提唱したものです。1998年にサービスが開始されたのですが、実はサービス開始の20年前に構想があり、技術者や専門家でも実現不可能の話として一笑されたものでした。当時はまだ、携帯電話も自動車のトランクに無線機を積んで受話器を社内のコンソールボックスにつけたものが主流でした。とても、手軽に持ち歩けるものではありません。そんな時代に、国際的な携帯電話メーカーである同社は、各国の無線方式や無線基地局に依存しないで、通話ができるシステムができるはずだということで始めたのが、イリジウム計画です。計画は、当初は77個の衛星連動基地局で計画されたため、原子番号77のイリジウムにちなんで名づけられものでした。同社は、77個で全地球の通信のインフラストラクチャをつくるのが、携帯電話の上位概念としてあったのです。

 当時は、衛星投入の投資に見合わず、サービスは無理との声がありましたが、結局衛星を打ち上げ、サービスを提供したのです。(結局は最初の危惧通り、投資に見合わず、一旦サービスは中止となりましたが。)ただし、この計画は無駄であったわけではありません。その後、国際通話も可能で、どの国に持っていても規格が統一されたものとして発展していったのです。

 今回のプラクティスは、上位概念を使って出たアイデアと元のアイデアを組み合わせることで、広げる体験をしてみましょう。本来はあなたのアイデアの上位概念を使った練習が良いのですが、上位概念があるとは限らないので、例でこれを体験します。


【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング⑤Let's challenge!

問題

プラクティス4で出したA×B, A’×B, A×B’,C’を振り返って、注目するアイデアに前提条件があるかを探ってみましょう。

進め方 場所、時間、タイミング、利用者、使われ方、購入の仕方にある暗黙あるいは明示的な前提条件をそれぞれ、3項目程度だしてみましょう。上位概念なら、他の商品アイデアもイメージできるはずですから、出した項目からイメージできるかをチェックしてみてください。

回答例

仕事の場であって、成果が求められる

常に活性化した状態である

喫煙室、食堂、自動販売機設置場所、休憩室である

メリハリをつけるための休憩が必要である

場所:勤務の場、時間:勤務中、タイミング:休憩、リフレッシュ、利用者:オフィスワーカー、使われ方:飲み食い、購入の仕方:自動販売

上位概念の候補:「手軽に勤務時間でも息抜きができる場の提供」

上位概念が思いつかない

 何度も言いますが、上位概念はアイデアを集めただけでは出てきません。多くは前提条件があって、その中にあるニーズを探り出すことから始めます。ですから、一気に上位概念を出すべきと考えずに、出てきたアイデアを俯瞰する気持ちで、眺めてみてください。候補となるものがいくつか出てくるはずです。その中から、これまで出た商品イメージと違ったアイデアがでれば、上位概念とすることができます。

NEXT Step

 上位概念をでたら、今度は別のアイデアの展開で、商品のアイデアの系列を作っていきます。準備として、アイデアを列記しておきましょう。

例 「おとなのチョコドリンク四季限定版」で、「手軽に勤務時間でも息抜きができる場の提供」からみた別のアイデアを検討します。


【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング⑤「一つ上」にある考えを見つけよう!

 これまでは、「どうして?」を繰り返し、どちらかといえば、概要から詳細、マクロからミクロといったブレークダウン(分解)に向けてアイデアを拡張してきました。さらに、「発想の地平線」を見出すことでもありました。

大きく視点をあげてみよう

 今度は逆にボトムアップ(構築)に向けて、「発想の高度」を見出しましょう。

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 「発想の水平線」まで到達したいくつかのアイデアをまとめて、持ち上げる上位概念があれば、それをまたブレークダウンすることで、別の次元のアイデアを得ることができます。

 ここでのポイントは、上位概念が必ずしも存在するものでないことです。上位概念が存在すれば、飛躍的にアイデアが広がります。もう一つのポイントは、上位概念を支えるアイデアが多いほど、包み込むアイデアが多くなり、拡張度が高くなります。ここでは「発想の高度」と呼ぶことにします。発想の高度が高いと、多くのアイデアを生みやすくなります。

 「おとなのチョコドリンク四季限定版」企画を例に上位概念を取り上げてみましょう。

 チョコドリンクは、チョコレート、ドリンクのどちらが上位でしょうか?結論は、企画者が提供したいものが上位概念になります。発想の地平線で広げていった結果、チョコレートドリンクになった経緯があり、チョコレートが主題であったので、今回はチョコレートと関連する情報が上位概念となります。

 上位概念は、チョコレートを提供することになった経緯にも影響されます。

 自然食品で、誰にでも親しまれ、安定的に供給でき、健康にも良い食品というものがチョコレートを使った商品の上位概念です。逆に、自然食品で、誰にでも親しまれ、安定的に供給でき、健康にも良い食品はチョコレート以外にもたくさん存在します。コーヒーや小豆、大豆、小麦、米などです。チョコドリンクに類似商品で企画としてはインパクトに欠けます。しかし、豆乳や小豆、ライス・プディングといったものであれば、姉妹品としての系列化がはかれそうです。このように上位概念をつかむと、ブレークダウンして、別のアイデアに展開することもできます。

上位概念を探索する!

 上位概念が存在するかは、アイデアの前提条件とアイデアを具体化する意思で決定されます。

  • 注目するアイデアに前提条件があるか

 エジソンが実用化した白熱電球のアイデアも前提がありました。例えば、電気を通さない絶縁材料と電気を通す導電材料という考えです。電球内に閉じ込めた絶縁材料のガス、金具は導電材料といった具合です。また、白熱電球は、電気エネルギーを熱エネルギー(ジュール熱)、さらない光エネルギーに変換することが原理であることも前提でした。つまり、エジソンは、電球の実用化には貢献したのですが、電球そのものを生む出したわけではないのです。彼が有名になったのは、白熱電球の実用化を行うだけでなく、それを上回る、電気エネルギーの変換、伝送にあったのです。この場合の変換の対象は電気エネルギーから光エネルギーへの「恒常的な」変換だったのです。ろうそくや行燈に頼らず、いつでも光が安定的に手に入るもので、それを行うアイデアが重要だったのです。

 恒常的な光の獲得。そのために切れない、長寿命を保証する電球の実用化で有名になったのです。彼のアイデアは、光を放つフィラメントの抵抗に着目し、寿命を千倍以上に伸ばしたことなのです。このようにして、長寿命電球という、一つの小さな発明が、電力を使う機器の事業と伝送する事業を約束することになったわけです。エジソンには、この上位概念への挑戦という野心があったわけです。

  • 隠れた暗黙の前提や背景は、インフラストラクチャやプラットフォームの存在がないか

 白熱電球を利用者の視点で見ると、背後に電力システムというインフラストラクチャがあることがわかります。上位概念は、図では上位にありますが、多くのアイデアを支えるプラットフォーム(土台)の役目になります。

 アイデアは既にあるインフラストラクチャやプラットフォームを基礎にできていますが、新規発想型の中で極稀にインフラストラクチャやプラットフォームの発想そのものである場合があります。このような上位概念そのもののアイデアは、別のアイデアの宝庫でもあり、ヒット商品の母体となる発想です。

 エジソンの例で説明しましょう。現在の電力会社は大規模ですが、最初の設備は、発電機と送電線、変電器、そして、電気を消費する様々な機器から構成されたインフラストラクチャだった訳です。事実、エジソンは、自ら電力会社を作り大成功を収めたのです。

  • インフラストラクチャやプラットフォームの正体は

 では、ナゾかけではないですが、インフラストラクチャやプラットフォームはどうして生まれてきたのでしょうか。答えは、利用者やお客様の共通の要望、ニーズを具体化したものが、インフラストラクチャやプラットフォームです。エジソンの電力会社の必要性は、利用者やお客様にはわかりません。しかし、日常の業務や家事といったことを、自分の力以外でやってほしいといった共通のニーズがあったのです。この要望を満たすために、様々な電気製品や家電商品が必要であり、これらを動かすために電力会社が必要だったのです。

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 発想の高度は、生み出すアイデアの量だとも言えます。上位概念で支えられているアイデアが、大きければ(高度が高い)、新規に生み出すアイデアも増えるからです。

上位概念は抽象的か

 実現した電力システムは具体的ですが、エジソンの時代には、抽象的なアイデアであったとも言えます。電気の応用も当時は、白熱電球や蓄音機、モーターといったものでした。現代のように電気がないと生活できない環境ではなかったのです。当然、エジソンのアイデアも空想の一部といも言われたでしょう。このように、上位概念が見つかったとしても、具体的な応用やニーズにこたえるサービスにするには、技術やスキル、流通などが育っていなければなりません。空想ではなく実用にする技術やスキル、流通が必要なのです。

 ヒット商品の生み出すことは、自分の発想力のアップと技術やスキル、流通の他者の力があって、さらにワクワク感という意思が働く必要があるのです。成功確率が低いのもそのためです。

 では、自分の発想で上位概念に挑戦しましょう。