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【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング④Let's challenge!!

問題

 プラクティス3のロールプレイの買い手の仮説を検証します。バリューチェーンを書いてみて、買い手が本当にターゲット通りであったか、なければ、正しい直接顧客の設定で再度、ロールプレイを行ってください。

進め方 1つの商品につき、1つのバリューチャーンを検討します。最初は、最終的に商品やサービスの価値を受け取るエンドユーザを書きます。エンドユーザが対価を払う相手を記入し、価値の提供者をさかのぼっていきます。その際に、自社の位置付けとなるところまで完成してください。

回答例

 「大人のチョコドリンク季節限定版」の商品化でのバリューチェーン4-4C

自社は、飲料メーカの位置付けであることがわかります。

顧客が定まらないあなたに

   商品を「○○をおこなうときにつかう」という状況を想定してみてください。その状況で、利用者は少なくともエンドユーザや顧客です。次に利用シーンごとに同様に顧客候補を出してみましょう。まとめると、共通の顧客候補がわかり、特殊な状況での顧客候補も分けられます。さらにバリューチェーンを書いてみてください。特殊な状況での顧客候補はエンドユーザであることもあります。また、共通の顧客候補が直接顧客であることが分析できることになります。

NEXT Step

 商品アイデアをさらに、10の問いで具体化していきます。「10の問い」の(10)今後の収益成長の見込みはどうかまで書き込んでみましょう。書き込んでいく中での疑問や矛盾、行き詰まり、誤りが出てきます。次のプラクティスで解説します。

準備 あなたの商品案で「10の問い」に答えてみてください。


【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング④「顧客は誰か」を明確にしよう!

 1.で説明した「10の問い」で商品アイデアを点検していきます。

単純な質問、でも答えは?

 第1の質問「顧客は誰か」。単純ですが、意外に曖昧にして計画を進めてしまいます。陥りやすい答えとして、エンドユーザを答えてしまうことです。あくまでも、顧客は、あなたの商品を買い、対価を払ってもらう直接顧客です。

 では、商品案に対して、直接顧客を確実に、しかもいくつかの顧客候補を仮説と検証を行うにはどうすれば良いでしょうか。

4-4A

 この問題を解決するために分析法としてよく使われる考え方があります。価値連鎖(バリュー・チェーン)という考え方です。これは、ABに商品を販売することで、ABから対価をもらう、つまり、ABに価値を提供することで、対価を逆にもらうことになります。さらにBCAからの商品に付加価値、例えば加工してCに販売すると、Bは、Cに加工した商品とう価値を与え、その対価をBCからもらうという連鎖が出来上がります。価値の流れは、ABCで、対価の流れは、CBAと逆方向に流れます。価値の連鎖を追えば、Aの直接顧客はBBの直接顧客はCとなります。AからみてCはエンドユーザとなります。

4-4B

自動車業界の場合、図のようなバリューチェーンが出来ます。自動車業界というと、メーカを頭に思い浮かべますが、自動車メーカ自身は、販売先としてディーラ(販社)を通じてエンドユーザに自動車を提供しています。つまり、メーカの直接顧客は、ディーラなのです。同図のコンポーネントとは何でしょうか。これはもともとメーカが製造していたユニットやモジュールといった一固まりの部品で、例えば変速機のようなモジュールを専門的に製造するメーカです。自動車メーカから見れば、製造の一部を外部に委託製造することでコストを下げるもので、アウトソーシングとも言われます。このように、顧客の業務の一部を受け持って事業を行う形態もあり得ます。アウトソーシングの顧客は、この場合自動車メーカとなります。

 バリューチェーンを使って、顧客を考える場合の注意点として、最終的な1つの商品を受け取るエンドユーザから考えていくことです。図で言えば、右から左の対価の流れに従って考えることです。逆に左から右へ価値の流れで考えていくと、エンドユーザや直接顧客が広がりすぎて、絞れなくなります。

 もう一つの陥りやすい誤りとして、ターゲットとする顧客イメージが広すぎて把握できないというものです。広すぎる場合は、いくつかの顧客候補に分けて、それぞれの顧客候補に対して商品がどのように需要を満たすかを確認しなければなりません。

 また、B2B(企業間取引)の場合、顧客企業の業界が大きく誰がターゲットなのか自社の立場によって異なる場合もあります。図のように、ITのサービスを商品とする場合、IT部材として考えるか、ITサービスを特定の会社のソリューション(解決サービス)と考えるか、さらに顧客企業のアウトソーシングと考えるかで、価値の流れと対価の流れ、収益の取り方(収益モデル)も変わってきます。顧客は誰かのよって、売る商品は同じでも、対価の取り方が異なることに注意してください。

 さらに、商品を製造することが強い企業やコア技術を持っている企業にも陥りやすい誤りがあります。それは、顧客の視点を忘れて、先ずは商品ありきで考えてしまう、プロダクト・アウトの考え方です。プロダクト・アウトは開発や製造、販売といった企業で最もコストを抑え効率的に動ける活動を支持することから、想像現場での受け入れやすい傾向があります。しかし、顧客から見ると過剰な機能、複雑な操作といった商品の弱点を見せてしまうことにもつながります。これでは折角、売れる商品でも売れない状況となってしまいます。事業化のプロセス「10の問い」では、プロダクト・アウトのわなに陥らないためにも、対象となる顧客を明確にしているのです。

ロールプレイでの買い手は正しかったか

 前回のロールプレイで、売り手の指示で顧客(買い手)を指定しました。買い手は、確かに商品の利用者や販売者であったのですが、直接顧客かエンドユーザではバリューチェーンで考えたように、売り方が異なります。場合によっては直接顧客に売るために、エンドユーザには、自社の商品は売れないこともあります。例えば、自社がメーカで、直接顧客が卸売であった場合などがあります。

 では、プラクティスに進んで、顧客は誰かの問いに答えてみましょう。


【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング③販売現場のロールプレイングをしよう!

 インタビューを終え、商品イメージも固まり、すぐにでも試作やサンプル、試行サービスの検討に入りたいところですが、「わな」が潜んでいます。

試作やサンプル、試行サービスのわな

 問題は、インタビューの相手がエキスパートと想定顧客であって、実際に買う状況ではないのです。エキスパートインタビューであなたは業界通になっても、相手のエキスパートは、あなたの商品アイデアを熟知しているわけではありません。その点では想定顧客にもなりません。想定顧客も、インタビューをされているときは、購買するときの姿勢ではありません。むしろ、第三者的です。「○○という機能があれば買う」といっても、実際に購買行動に出るかはわからないのです。このようにインタビューの結果だけに頼ると、出て来た商品は全く顧客に受け入れてもらえない可能性もあるのです。

 商品のイメージを固めるには、確かにインタビューは有効ですが、実現する商品ネタにはまだギャップがあるのです。このギャップを埋めるにはどうすれば良いのでしょう。

再現!販売現場

 試作やサンプル、試行サービスを始める前に、商品カタログとインタビュー資料、インタビューの総括で、このギャップを埋めてみましょう。それには、あなたと協力者2名が必要です。あなたは、販売員で商品カタログを持って売ります。もう一人は、顧客で、あなたの商品を買い、最後の一人は、あなたと顧客役の観察者となります。そう、販売の現場を再現するロールプレイゲームです。

 ロールプレイを始める前に、○図に示すようにあなたは、販売員と顧客の位置付けを明確にして、顧客役にも理解してもらいます。さらに、これまでのインタビューの総括を一読してもらって、商品アイデアに対して出て来た意見や批判、疑問などを把握してもらうのです。観察者は最も重要な役で、ロールプレイの後に当事者には気付きにくい、商品や販売員、販売方法の弱点などをフィードバックします。次に、販売員(売り手)と顧客(買い手)、観察者は○図に示すような各役割の留意点を念頭に入れます。

 さて、ロールプレイをはじめましょう。最初はあなたが販売員で、顧客を訪問する状況から始めます。あなたの自己紹介の後、商品カタログで説明を始めます。

4-3A

 途中で、売り手も買い手も資料にない状況時なってもアドリブで続けてください。制限時間になったら、買い手は、売り手に、買うか買わないかを告げ、買わないならその理由を説明します。その後、観察者は、売り手に、双方のやり取りで気付いた商品、販売方法、販売員の弱点や良かった点をフィードバックします。

  4-3B

 フィードバックが終わったら、売り手と買い手が入れ替わります。観察者が売り手になっても構いません。ただ、あなたは、立場を逆にして顧客の視点で、商品を検討することになります。制限時間は同様に5分程度。役割の設定は、売り手が指定します。

 さて、ロールプレイを行うことで、実際に、売り買いを行う現場となると、これまでのインタビューとは違って、多くの課題や未確定の部分があることに気付くでしょう。ここでのロールプレイは、商品に興味を持ち、納得すれば購入する「良い客」を相手に商品を売る状況を再現しています。つまり、販売状況としては最良の条件です。そのような状況でも、課題があるとすれば、試作やサンプル、試行サービスを行っても良い結果は得られないことが事前にわかることになります。

 では、プラクティスに進んで、実際にあなたの商品アイデアでロールプレイを体験してみましょう。


【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング②Let's challenge!

問題

 プラクティス1のインタビュー資料を使った結果を以下の要領で検討してみましょう。

(1)      エキスパートインタビューの結果から

  •   あなたの商品アイデアの仮説はどこまで進みましたか。進まなかったのは、アイデアそのものですか、それとも前提条件ですか。
  • 現在の業界の情報で、商品仮説は支持されましたか。支持されないなら何が課題ですか。
  • 将来の動向で、商品展開は進められますか。障害があるなら対策はありますか。

(2)      想定顧客インタビューの結果から

  • 共通して言われる内容は、QCDのどの内容ですか。商品アイデアで訴えたいのはQCDのどれですか。
  • 購入する条件はQCDのどの内容ですか。商品アイデアで訴えたいのはQCDのどれですか。
  • 想定していないアイデアがありましたか。また、特殊な用途や特別な顧客がありましたか。

進め方 結果をまとめる前に、出来るだけ多くのインタビューを進めましょう。結果が多いほど、商品アイデアを固める精度が上がります。

回答例

 「大人のチョコドリンク季節限定版」:

エキスパートインタビューの総括:チョコレート飲料の知名度がカギ。炭酸飲料、コーヒー飲料といった工場出荷でない味が出せれば差別化でき将来性はある。価格が高いのが気になる。

想定顧客インタビューの総括:気分を変えるにはお菓子感覚でうけるかもしれない。飲むことには結構皆なこだわりがあるので、コーヒーなどと同列に思える。職場売りならこれ以外の限定菓子を売ってほしい。

インタビューの結果がまとまらないあなたに!

 次に進む前に、あなたのインタビュー結果の点検です。

4-2

何度もインタビューすることも重要です。相手に迷惑にならない程度に進めましょう。

NEXT Step

さて、商品アイデアも固まった、では、原価計算、・・・と急いではいけません。ここまでで、何とか相手に商品のイメージを伝えた程度です。本当に購入の場になると、インタビューとはことなります。次回は、商品のひな形を使って、商品ネタから商品として進めるかを点検します。

 インタビューの総括をもとに、「大人のチョコドリンク季節限定版」の夏バージョンを試作することにしました。どんな手順で、どう売るかを想定してみてください。



【ヒット商品】ネタ出しの会  4. 実行編 ヒット商品ネタを実現する8つのトレーニング②インタビュー結果を分析しよう!

 良く営業は「聞くのではなく、聴いてこい」といわれます。書いて字の如く、聞くのは「耳」で音を物理的に聞き、聴くは、「心を傾けて」相手のことを聴くといわれます。インタビューのときも、説明する方が聴くよりも多くなる傾向にあります。確かに自分の考えたことですから、説明は容易ですが、相手の意見や批判、疑問に応えるには、きちんと相手の言うこと聴かねばなりません。

聞くではなく、聴く!

 陥りやすいインタビューは、ギブ・アンド・テイク(give and take)がないことです。Give、つまり、情報を相手にあたえ価値を感じてもらうこと。Takeは、相手から価値ある情報を得ること。Taka and takeになってはいませんか。たとえ、相手が業界に通じた専門家でも、素人の視点で見たときに気付きがある場合もあります。専門家も人間ですから既成概念で見ているかもしれません。つまり、インタビューはあくまでもgive and takeのコミュニケーションなのです。その信頼の中で、得られた意見や批判、疑問には真っ向から取り組まねばなりません。

 批判的な意見は聴き辛いものです。しかし、一歩引いて考えると、その意見にはいくつかの商品仮説の弱点や既成概念で作られた部分を含んでいる場合があります。また、前提条件自身が、専門家から見れば、稀なことかもしれないからです。

QCDを明確にしよう

 想定顧客インタビューを進めていくと、いくつかの気付きがありませんか。

  • 口を揃えて、指摘される事項がある
  • 顧客が日常感じている問題点である場合にでる傾向です。言い換えれば、問題点を解決できれば大きな需要が見込めるとも言えます
  • 「○○だったら、検討したのに」と言われた
  • 仮説の前提条件が、顧客のニーズと差がある場合ですね。顧客が想定しているQQuality 品質)、C(コスト Cost、価格)、DDelivery 納期)の3つが異なっている場合にでることばです。
  •   「ウチでは○○だから、この商品だと取り上げられない」と言われた

 ビジネスモデルが想定と異なる場合にでる意見です。ビジネスモデルは、商品やサービスを提供する場合、どうやって対価を得るかを示すものですが、インタビューした相手の位置付けが、想定した仮説と異なっていることを示します。例えば、インタビューの相手がエンドユーザで、商品を仲介業者経由で卸して販売する場合、このような意見がでることもあります。自分にとっての直接顧客はあくまでも仲介業者となります。エンドユーザに意見を聴くなら、「今は取り上げられないかもしれませんが、直接お買い求めできるとして意見をお伺いしたい」と切り返す方法もあります。

 商品カタログとインタビューの資料で得たフィードバックで、仮説が大きく変わる場合もあります。早速修正をしましょう。

エキスパートインタビュー結果を分析しよう

 エキスパートから聴いた参入業界の状況や変化、動向を活かして、商品展開を再検討しましょう。特に重要なのは将来の動向です。新商品は、参入する業界側で既存顧客を持っているという点では不利ですが、新たな顧客や既存業界が「しがらみ」でできない部分を攻めることができるという点で有利です。動向を見極めて、商品を提供する相手とタイミング、商品の差別化ポイントであるQCDを明確にしておきましょう。

 将来の動向は、顧客の要求がどれくらいかをする手掛かりでもあります。今は満足していないで購入しているのか、もう基本的な機能には満足して購入しているのかといったレベルです。また、顧客の中には、想定しない利用法や応用を知って購入する場合があります。これも新しいアイデアに結びつくヒントが隠されています。

 例えば、天日干し用の吊るし網という商品があります。干物を手軽に作れるという三段網です。本来は、干物ようですが、乾燥させる対象を広げて、衣類や食器といった用途にも使えます(もちろん、干物と一緒というわけではありません)。アウトドアなど食器を使った後の乾燥にはとても重宝です。まったく構造が同じで、アウトドア専門メーカーも目をつけたのか、同様の商品を出しています。セーターなど拡げて干せるので、皺になりにくいことから部屋干用に購入している人もいます。このように、利用者側の工夫で、新しい用途を生み出すこともあり、それがヒット商品になる場合もあります。干し網の場合は、第3章で述べた上位概念として「自然乾燥を行う」ことで用途が広がったわけです。

 では、プラクティスに進んで、インタビューの結果を活かし、商品アイデアをブラシュアップしましょう。