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2011.8.23  日経産業新聞集の記事「『社会的責任』世界の視点⑥:企業の競争力に直結」から

米ポーター教授の共通価値の理論:「企業の競争力は健全な社会との共存」

コラムの著者 損害保険ジャパン理事CSR統括部長 関正雄氏が紹介するのは、競争戦略の大御所のマイケル・ポーター教授の共通価値の理論だ。(▶ 参考

CSRが企業の競争力にどう関わるか。これが今回のコラムの主題だ。先ず、直接的には規制への対応が企業の競争力に関与する。これまでの記事にある米国の紛争鉱物の情報開示義務や欧州の厳しい環境規制など、企業の社会的責任の履行を求める傾向は強くなる一方だ。

責任競争力、すなわち、グローバル市場での競争ルールの変化に如何に適応するかといった能力が問われ、サプライチェーンも含めて、責任競争力がないと、自社が市場から締め出される死活問題となる。

さらに社会的な要請を背景に投資家からの圧力もある、SRI(社会的責任投資)がこれに当たる。企業の中長期的な成長要因をESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みの中に見出す評価でスクリーニングを行う。

米ポーター教授は、競争優位のCSR戦略を唱え、社会と共有できる価値を創造できることが、競争優位に導くことだと説いている。CSRは、効果が見えない慈善行為のコストではなく、イノベーションへの投資と考える見方だ。企業が自社の強みを活かして社会との共通価値の創造を行うことが新しいビジネスチャンスになるという。

この理論の背景に、企業と社会は対立軸にあるのではなく、一体化から戦略的なCSRを発想すべきという示唆が含まれているという。健全な社会は企業にとって需要の拡大につながり、健全な社会には成功企業が欠かせないという。ポーター教授はネスレのインド農村での事例を挙げ、原乳供給の安定的調達を行うために農村の灌漑設備の充実や生活改善を行うことで、生産量は一気に増加し、生活水準の向上は、市場拡大につながった、としている。

CSRを巡る一見大きく解けそうにない課題を、企業のビジネスチャンスと考えて技術革新などに取り組むことがその一歩になることをポーター教授は示唆している。

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