【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:温度の再定義、物質によらない普遍性獲得」から
2016/06/30
2016.6.21 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:温度の再定義、物質によらない普遍性獲得」から
計測技術の向上で標準の変動が顕在化
コラムの著者 山﨑弘郎氏(東京大学名誉教授)は、計測技術の向上で不変と思われている量の単位である温度を取り上げ、徐々に物質に依存しない計量数に変化していることについて語っている。
◯温度の標準は水の三重点から
山﨑教授によると、温度の標準は水の三重点の温度とされている;
- 真空の容器に純水を入れる
- 気体の水蒸気、液体の水、個体の氷の3相が共存する状態
- 容器内の温度と圧力が、273.16度(ケルビン)、612パスカル
で一義的に定まる点であるという。この点は千分の1度変わっただけで、水あるいは氷になるシャープな点でもある。三重点の定義を約100年前に提案したケルビン卿の名前をとって温度の単位に定められている。
三重点を実現する装置を三重点セルとよび、各国の温度の標準としてきた。ところが、各国のセルを持ち寄り比較すると、約1PPMのばらつきがあることがわかり、物質による量の定義に限界がき始めているという。
そこで、ボルツマン定数を利用した新しい温度の定義をしようと話題になっているという。ボルツマン定数は、温度との積がエネルギーとなり、物理現象の表現に頻繁に現れる。
温度の再定義は、ボルツマン定数を種々の方法で実測し、値が十分な精度で得られたら、その値を固定して、逆に温度を定義するというものである。つまり、再定義には
- 2つの異なる手法でボルツマン定数の測定が行われること
- 得られた定数の値の不確かさが水の三重点の不確かさをしたまわること
が実現条件となる。現状、先端技術でゴールの一歩手前にあると山﨑教授は語る。これが、物質によらないボルツマン定数で行われると、これまで高温度の絶対測定が可能になるなど、使用される温度計の種類に依存しない特徴が得られると期待される。