【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「西川英彦の目:深い対話が生む市場」から
2014/08/23
2014.8.21 日経産業新聞の記事「西川英彦の目:深い対話が生む市場」から
福祉車、信頼築き完成
コラムの著者 西川英彦氏(法政大学経営学部教授)は、トヨタ自動車の小型車「ラクティス」の車椅子仕様車タイプⅡ」の事例に、ユーザとの信頼関係を前提に深い対話からニーズをくみ取ったことで好反応を得たことについて語っている。
○開発者自らがユーザーをインタビュー
この仕様車の大きな特徴は、従来のバックドアから車椅子を入れるのは同じだが、固定位置が運転手から手の届く「1.5列」である。この位置決めには、開発を手掛けた中川茂氏の努力によるものであるという。
中川氏は自身の子供が障害を持つことから福祉車両部門への異動を希望。開発するにあたり、身体の不自由な子供を持つ母親のニーズを徹底に調べることにした。
中でも自宅近くに重度の障害を持つ子供をもつ母親との出会いが転機になったという。母親の気持ちに近づこうと、時間をかけて日常生活を詳しく聞いていくと、母親が子供を車で送迎していることが分かった。
駐車場で車椅子から子供を抱きかかえ、自動車の助手席に乗せる様子を観察させてもらい、写真に記録した。雨の日は困るだろうとの問いに、母親は、雨の日は濡れるのは当たり前、まして、車を改良しようといた発想もなかったという。困っているとの実感もなかったという。
既存の小型車にスロープを付け、車椅子仕様なら雨の日にも濡れない。また、バックドアから車椅子を入れることを提案した。これを聞いた母親の反応は、
『それでは、車椅子が後部に設置されていて、怖くてのれない』
といったものだった。運転席から手が届く範囲でないと、前かがみで気道をふさぐような前のめりになった時に危険だというわけである。子供自身で姿勢を保てないためである。
こうしたやり取りから、思いついたのが、「1.5列」という発想。助手席を前方に折り畳み、その後ろに車椅子を固定できるようにして手の届く範囲にした試作車で反応をみた。これに対して良い反応であった。
深い会話をユーザとできることも困難である。さらに信頼関係があってこそ、深い対話ができる。その気遣いを中川氏は心得て、開発したことが成功につながった。
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