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2011.10.13 日経産業新聞の記事「グローバル人材、育成モデル⑤」から

陥りやすい海外出向の課題

コラムの著者 プライスウォーターハウスクーパーズディレクター臼井淳氏が取り上げる企業は、現在進行形で名称が明らかにできない、失敗事例を持つ中堅企業である。

海外での売上高を順調に伸ばし、現地法人の社長は、日本本社の部長クラスで賄ってきた。しかし、海外拠点が急拡大したことから、派遣できる人間が枯渇してきた。赴任期間の延長策ももはや限界。当時の経営トップが出した結論は、これまでの部長よりもワンランク下の次長クラスを派遣することにした。問題はこの後。人事部は苦肉の策として、派遣する次長クラスの負担を軽減するためい、課長クラス2名を補佐役として各拠点に配置することにした。グローバル人財の育成に役立つだろうという皮算用だ。

ところが2年後、想定外の事態が発生した。補佐役として派遣した課長クラスを現地のスタッフが突き上げてきた。さらに、「なぜあなたは本社から派遣されたのか」と厳しい突き上げで、当の課長は自信喪失となり退職を言い出すものもでてきた。人財育成どころか会社機能の危機である。

臼井氏はこの時点で相談受け、現状把握を行った。とん挫の原因は、課長クラスの多くが、赴任前に、非常に狭い部署の業務しかこなしてこなかったことが分かり、現地法人との権限の大きさと目張りの広さがケタ違いであったこと、さらに、経営の一翼を担うといった自覚も乏しいことにあった。国内では課長は精々、6人の部下をまとめれば良かった。ところが、現地法人では50人から300人を担当し、複数の部門長を管理、経営トップの補佐役までこなす必要があった。

臼井氏のこのような課題に対して、従来の日本企業が行うコンプライアンスや語学研修を中心とした人材育成策では立ち行かず、現地法人の社長や補佐役に求めれる役割と使命を詳細に再定義し、その上で、必要となる業務経験や知識、発揮すべきリーダーシップの具体像をまとめることを示唆した。「あるべき姿」の定義は、育成対象者の理想と現実のギャップを見極め、対策を打つために重要だという。

同社の効果が出るのは時間がかかるだろうが、対策を早速具体化して積極的にグローバル人財の育成へと打って出ているという。失敗から学んだ取り組みもそろそろ成果がでる時期だという。happy01

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