【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「TechnoSalon:洋上風車の電力、水素に変換」から
2023/06/18
2023.6.14 日経産業新聞の記事「TechnoSalon:洋上風車の電力、水素に変換」から
発電から送電/エネルギー輸送の過程がロスを生む
コラムの著者 円山重直氏(東北大学名誉教授)は、洋上風力発電の風車を用いた再生可能エネルギーの効率的な利用法について提案し考察している。
○エネルギー効率の課題はグリーン水素利用の共通課題
円山教授によれば、漆器に使う漆の採取にヒントを得て、洋上風車を使ったエネルギー輸送システムを考えたという。
漆は職人が漆の木を傷つけて出た樹液である生漆を巡回して採取し、精製するという。つまり、風車で溜めた水素エネルギーを適時に採集して利用するというものである。
日本のような周囲が海洋であれば尚更注目されているのが、洋上風力発電所である。洋上電力の開発が進み、陸地から離れた沖合に浮かんだ構造物(浮体)の上に風車を設置する。通常、発電された電力は海中・海底ケーブルで送電される。
近距離送電では交流送電が優位であるが、長距離となると高圧の直流送電が必要となり、洋上で交直流変電設備が必要となる。また、海中や海底で長距離送電するのはエネルギー損失が大きいため、沿岸から遠距離の洋上発電所は送電設備とその維持が課題となる。
円山教授は、漆の採集と同様、洋上風車で得られるエネルギーを回収船で輸送することを提案している。風車に水の電気分解装置を内蔵させ、生産された電力で水から水素と酸素に電気分解して水素を得て、浮体を水素の貯蔵タンクとして利用する。水素貯蔵タンクが満杯になったら、回収船が水素ガスを回収する。陸地では燃料電池やアンモニア製造にこの水素ガスを利用してエネルギーとする。風車と地上を結ぶ送電線や変電所は不要となる。円山教授は、実際このシステムが稼働するかどうか試算している:
- 風車の形状:直径82.4mの定格出力電力2.3MWの浮体式洋上風車
- 浮体:直径6m、長さ100mの高圧タンク
で風車が定格出力で稼働したとすると、タンク内が50気圧になるまでに13日かかる。さらに、資源エネルギー庁の2020年電力統計では、風車は定格の23%しか稼働しない。結局、水素回収船は約2ヶ月に1度この風車を訪れる計算となる。回収時期は、水素貯留率をモニターしながら水素を回収する。
建設費やその回収効率といった経済性を除いてもこのシステムには欠点があると、円山教授は指摘している。それは、エネルギー効率の課題である。
電力の水分解で水素を作るエネルギー効率は約70%で、燃料電池の発電効率は高くても60%程度、水素でアンモニアを作り火力発電所で電気を作ると効率はさらに下がる。つまり、電気で水素を作り、それを再び電気に変換するシステムは生産される電気エネルギーの半分以上を環境に捨てていることになる。これは、今回の洋上風車の例だけでなく、再生可能エネルギーを使ったグリーン水素の根本問題で未解決である。🌪️🚣♀️🎓🔍✏️📖💡💡👦👧🧑🦯👩🦯⚡️💹📖🖋🔑🩺💉🏢⚡️⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🇯🇵