【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:エントロピー、『曖昧さ』科学的に示す」から
2016/07/02
2016.6.24 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:エントロピー、『曖昧さ』科学的に示す」から
生命はエントロピー増大の法則に反する?
コラムの著者 和田 昭允氏(東京大学名誉教授)は、熱力学の大きな抽象概念であるエントロピーについて語っている。
◯熱力学の第2法則
和田教授によると、エントロピーの定義について;
- 熱平衡にある孤立系で
- 吸収した微小熱量を
- その系の絶対温度で割った値
がエントロピーの「増加分」である。さらに熱力学の第2法則;
- 可逆変化ならば、エントロピーは一定、不可逆変化なら必ず増大する
である。
熱量や温度でイメージが湧きにくいこのエントロピーをオーストリアの物理学者ボルツマンは、気体分子の運動論から出発して統計力学で意味づけた。つまり、熱平衡をそれを構成する原子・分子の運動論と確率論に基づいて記述した。熱量は原子・分子の運動であることが直感的に分かり、その動きも確率論的にばらばらであることをいう。
ボルツマン原理によると、マクロ系のエントロピーは、それを持つ「ミクロ状態の数の対数」に比例するという。状態の数が増えるということは、選択の曖昧さが増え、エントロピーとは要するに、「曖昧さ」を科学的に表す量であることがわかる。
こうした科学的な「曖昧さ」を導入したのが情報理論の父と呼ばれる米国のシャノンで、情報エントロピーとして定義した。これは出現確率が多いほど情報量が逆に少ないといったものである。となると、「生命は情報の具現化である」といわれるように、曖昧さを排除した構成であることから、低い曖昧さ=低いエントロピーで、生きている限りは生物は低いエントロピーを保ち続けることになる。つまり、エントロピー増大の原理に反するのではないかと思える。
しかし、よくエントロピーの定義を見直すと、この原理は孤立系で成立することであり、他からエネルギーをとれば、エントロピーを下げることができる。外部から物質を取り込むことで運動の力学エネルギーを補充し、体内で常に余剰のエントロピーを処分することで、構造の秩序を保っているとも言える。
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