【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「FINANCIAL TIMES:『脱・株主第一』は止まらず」から
2024/09/14
2024.9.11 日本経済新聞の記事「FINANCIAL TIMES:『脱・株主第一』は止まらず」から
米テキサス州での法廷闘争は言論の自由、企業経営に大きな影響を与える
コラムの著者 ジリアン・テット氏(FINANCIAL TIMES コラムニスト)は、米テキサス州政府を持続可能な事業慣行を推進する企業団体「アメリカン・サステナブル・ビジネス協会(ASBC)」が提訴したことを取り上げ、これが言論の自由や企業経営の戦略に大きな影響を与えると述べている。
○単なるESGの是非論争からさらに複雑な課題へ
テット氏によれば、米テキサス州政府が提訴された内容はESG(環境・社会・企業統治)戦略を掲げている企業をブラックリストに指定することにした2021年、2022年の州政府の決定を不服としていることである。
同州の右派の政治家が、当初、ESG活動家が気候変動に関する見解を他人に強いることを阻止する対策としてブラックリスト指定を正当化したものという。だが、ASBCの原告側は、この決定が、暗に金融界に化石燃料の支援を強いることであり、言論の自由のルールを破っているのは、反ESG運動の方であると訴えた。つまり今回の訴訟は法律的な「返し技」である。
この訴訟のポイントは2つあるとテット氏は述べている:
- 5年前のESGという言葉が大流行した当時とは、取り巻く風潮が大きく変わったこと:
- 2019年米経営者団体のビジネス・ランドテーブル(BRT)は米経済学者ミルトン・フリードマンが提唱した「株主第一」からの脱却にそって、代わりに社会の利益と価値観を取り入れる「ステークホルダー(利害関係者)」の枠組みを提唱した。
- 以後、ESGやDEI(多様性、公平性、包摂性)が右派の格好の標的となる
- 一方、実業界や金融界の多くは政治的標的となることを避けるためにこのような言葉は控えている。
- 反ESG運動が見かけの上よりも複雑になってきた。運動の先は見えない:
- 一見、20世紀終盤のフリードマンの考えに戻ろうとする試みに見えたが、意外にも株主第一に戻ることを名国にするのは少数派である。従業員、サプライヤー、コミュニティーというステークホルダーと社会の利益重視を求めているのは、左派だけでなく反ESG派にもいる。
テット氏は、このような変化の要因が企業に対する社会の態度の変化にあると見ている。フリードマンの論説が強い時には市民は一般的に社会課題の解決を企業ではなく米政府の役割だと考えていた。つまり企業の透明性に期待を置いていなかった。今は企業がイニシアティブをとるべきという考えが優勢である。また、経営者も次第に自分たちが事業を営む社会的、文化的背景をもはや無視できないと感じ始めている。
一方、企業への最大のショックは、過去10年、ESGではなく、気候変動、パンデミック、ジェンダーの権利、政治的対立、戦争が別の世界から起こった。つまり、ESGという旗印の是非とは別に、ステークホルダー主義が繁栄してきているということである。迫り来る米大統領選挙と同様にテキサス州のこの訴訟の行方をステークホルダーは知らねばならないとテット氏は指摘している。🏢💬👦👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍🇺🇸