科学

【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「<サイエンスNextViews>『小さなAI』は大を兼ねるか、機動的な開発戦略を」から

2024.10.27  日本経済新聞の記事「<サイエンスNextViews>『小さなAI』は大を兼ねるか、機動的な開発戦略を」から

AI開発の枠組みを変える可能性も

コラムの著者 吉川 和輝氏(日本経済新聞社 編集委員)によれば、AIの研究開発の中心は、大規模言語モデル(LLM)であるが、存在感が高まっているのは大規模ならぬ軽量のLLMで日本企業の研究開発も盛んだという。果たして小規模モデルは米有力企業がスケールを重視したAI開発を推進している中でその可能性はどうなのかを解説している。

○「AIの民主化」よりも「覇権主義」の台頭が早いか?

吉川氏によれば、NTTではtsuzumi(つづみ)という軽量LLMを開発中であるという。同社以外の日本企業では日本語能力を強化した比較的小規模なLLMを重視している。国内ではAIを応用を業務改革やスマートフォン搭載などの需要が大きいためだという。

LLMのダウンサイジングは世界的に進み、米MSはモデルのパラメーター(機械学習によって調整される変数)を少ないビット数で表現する1ビットLLMを開発した。従来のLLMと同等の性能で消費電力を抑制でき省エネルギーにつながる。ソフトウェア開発の世界的な技術プラットフォーム、GitHubではEntropixというプロジェクトが進み、情報理論におけるエントロピーの概念を応用してLLMの推論を効率化する試みを行なっている。モデルの規模は1000分の1にできる可能性もあるという。

一方で米巨大テック企業の多くは、ハイパースケールという大規模なAI開発用のデーターセンターの建設を計画している。ここに中国勢も加わり、AIの覇権を狙う「軍拡競争」の様相となっているという。

日本企業の中でも例外的にスケール志向を示しているのがソフトバンクグループの孫正義会長兼社長で、軽量化による「AIの民主化」が進む前に最先端のハイパースケールのAI技術が覇権を握る可能性もあるからである。そこには汎用人工知能(AGI)の早期実現が研究開発の速度を上げる要因になっている。

吉川氏は、小さなAIモデルも技術開発の枠組みを変革する可能性を秘めているという。小さなAIの集合知でAGIを実現するという狙いもある。日本政府や企業は、今後の技術動向を見極め、研究開発の戦略を機動的に打ち出す必要があると、吉川氏は指摘している。🧠📱🛜💊👩‍🎓🎓💡🛠️🎸♪💬📻⚡️🏙️💡🏗🚚📈🏢⚡️💹📖🖋🔑🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵🇺🇸🇨🇳


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「Deep Insight:グーグルは第2の『ベル研』か」から

2024.10.26   日本経済新聞の記事「Deep Insight:グーグルは第2の『ベル研』か」から

米AT&Tを彷彿とさせる最近のGoogle

コラムの著者 村山 恵一氏(日本経済新聞社 コメンテーター)は、2桁のノーベル賞受賞者を輩出したベル研究所の研究環境や親会社の米AT&Tの当時の状況を彷彿とさせる、米Googleについて同じ轍を踏まないためにも米新政権は競争政策とAI規制など難問を解かねばならないと感じている。

○2024年のノーベル賞はAIの分野で米Googleの関係者3人が受賞

村山氏によれば、2024年のノーベル物理学賞はAIの分野でジェフリー・ヒルトン氏(トロント大学)で2023年まで米Googleに所属し、化学賞のデミス・ハサビス、ジョン・ジャンパー両氏はGoogleの持株会社、アルファベット傘下のグーグルディープマインドで、それぞれCEO、ディレクターを務めているという。

興味深いことに、Googleの研究環境について、ハサビス氏は「黄金時代のベル研究所に触発された。似たものをつくりたかった」と語ったという。

ベル研究所は1925年、米AT&Tが創設した。現在は業界再編でフィンランドの通信機器大手ノキアの傘下にある。同研究所にはトランジスタやレーダー、太陽電池、通信衛星など産業界に大きな貢献をした成果がある。研究所は、専門分野の壁を越えた交流でアイデアを育ててきた。数学者、化学者、材料科学者、冶金学者、エンジニアなどが同じ研究所で交流したという。

さらにこの研究所の特徴は、潤沢な研究開発費が親会社のAT&Tから提供され、研究者は息の長い研究にじっくり取り組める自由があったという。こうした研究環境が2桁のノーベル賞受賞者を輩出した。一方、グーグルディープマインドはベル研究所を規範として、機械学習やAI、工学、物理学、生物学、哲学などの世界的権威が集まっている。資金もベル研究所と同様に設立4年後のお2014年に収益力のあるGoogleに買収された。

研究環境に非常に似通っているベル研究所とグーグルディープマインドだが、親会社の悲哀も似通ってきている。Googleの検索サービスは反トラスト法(日本でいう独占禁止法)違反だとする米司法省が、独占の是正案を裁判所に提出した。提案には会社分割や事業の売却が含まれている。かつて1974年司法省はAT&Tに対して反トラスト法訴訟を起こし、1984年にAT&Tは分割された。ベル研究所もリストラや人材流出で、かつての輝くを失っていった。

もちろん、GoogleはAT&Tの轍を踏むことは回避したいだろう。多くの巨大テック企業が独禁裁判に直面している。だた、中には米国内の巨大企業が独禁裁判で弱体化すれば、テック覇権を狙っている中国に利を奪われかねないとの声もある。課題はノーベル賞を取るような企業の解体をどう向き合うべきかであり、受賞が免罪符ではなく、冷静と公正で判断する必要があるときだ。🚀🧑‍🔬👩‍🔬🔬👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇺🇸


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(8)、人間と機械が支え合う社会」から

2024.10.23   日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(8)、人間と機械が支え合う社会」から

人間・機械複合系の社会システムの創造

コラムの著者 佐々木裕一氏(東京経済大学教授)は、これまでのソーシャルメディアの特徴から社会との関わりを考察している。動画共有などが小グループで行われ、社会的に重要なニュースに多くの人々が触れる時間が減り、政治的な理性的な議論や政治執行の監視は今よりも弱くなると佐々木教授は予測している。

○機械の系の優勢を技術と規制でアンバランスを解消する

佐々木教授によれば、予測も重要であるが、どのような社会を中長期的に創るかがより重要であるという。佐々木教授はグロリア・マーク氏(米カリフォルニア大学アーバイン校 総長特任教授)の次のように引用している:

「私たちはデジタル世界を創造している最中である(それも初期の)」

この創造過程で、佐々木教授は人間という生物的な系と機械の系が互いに良好な影響を与え合う、「人間・機械複合系」の社会システムを創るという意識を各自が持つ必要があるとしている。

また、創造過程で「情報」自体を分類する必要があるかもしれない。西垣通氏(東京大学名誉教授)は生命情報・社会情報・機械情報に情報を分類している。生物(人間)が感じる生命的活動の生命情報、その生命活動と不可分な価値、言語などで他者へ伝える情報、コンピュータが扱う形式的データの機械情報である。

この中で社会情報はソーシャルメディアを通じて劣悪な内容も含め増加の一途である。このため、前々回紹介のあった、「システム1」「システム2」で説明すると、私たちが「システム2」によって生命情報を生む出すことが難しい状況にある。また、「システム1」が中心となる人間の心理的弱点につけこんで、機械情報がアテンション獲得のためにコンテンツを選別するようになってきている。

人間系と機械系の2つの系の接面(インターフェース)には生成AIなどのサービスが入り込むであろう。我々は自らの弱点をを認識して、技術や規制を使いながら圧倒的な機械系とのバランスを取る必要があると佐々木教授は警告している。🫶💬🛠️🛜💬📱👦👧💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(6)、偽情報が拡散してしまう理由」から

2024.10.21   日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(6)、偽情報が拡散してしまう理由」から

「頭を使って」判断すれば偽情報の拡散を減らせる可能性がある

コラムの著者 佐々木裕一氏(東京経済大学教授)は、前回のソーシャルメディアの悪影響を受けて、ソーシャルメディアで偽情報が拡散する理由について幾つかの仮説を紹介している。

○人間の2つの認知過程と確証バイアスによる仮説

佐々木教授によれば、ダニエル・カーネマン氏(行動心理学者)が提唱した人間の2つの認知過程で偽情報の拡散を説明しようとしているという。2つの認証過程は「システム1」と「システム2」と名付けられている:

  • 「システム1」
    • 高速で「直感的な」過程
    • 主役のシステムで低コストで判断できるが、後の「システム2」も使わないと正確な意思決定はできない
  • 「システム2」
    • 注意力を伴った「頭を使う」作業に必要な過程

さらに、カーネマン氏は人間は自分の考えに沿う内容を本当だと信じ、意に沿わない内容は嘘だと思う傾向があるという、確証バイアスも考察している。さらにゴードン・ペニークック氏(米コーネル大学准教授)はカーネマンの2つの認知過程と確証バイアスをソーシャルメディア上の偽情報との関係を解く研究を進めているという。ペニークック准教授は、偽情報を嘘だと見抜けないのは確証バイアスのせいではなく、システム2による分析的思考が足らないことが要因だとする実証的論文を発表している。

つまり、偽情報を拡散させないためには、もう少し「頭を使って」判断すれば、減らせる可能性があるということになる。

ところで我々がシステム2を作動させにくいのはどうしてなのか。佐々木教授は、作動させにくい要因が情報過多だと考えている。世の中に情報がお多過ぎて、「頭を使って」て分析することが億劫になっている。🛜💬📱👦👧💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵🇺🇸


【ヒット商品のネタ出しの会】日本経済新聞の記事「社説:民主主義の再生促す経済学賞」から

2024.10.17  日本経済新聞の記事「社説:民主主義の再生促す経済学賞」から

国家間の明暗を分けたのは第1次産業革命

2024年のノーベル経済学賞はダロン・アセモグル氏(米MIT教授)ら3人への授与が決定した。社説によれば、受賞理由は、国家が繁栄するかどうかは幅広い政治参加や経済的な自由に根ざす「包括的な制度」の有無にかかっているとデータで実証したことだという。裏返してみれば、民主主義の本質的な価値を理論で示したことになる。

○欧州諸国の植民地時代からの経済成長をデータで理論分析

社説では、スウェーデン王立アカデミーは「社会制度が国家の繁栄に与える影響の研究」を理由にダロン・アセモグル氏(米MIT教授)ら3人を選んだという。同研究で3人は、欧州諸国の植民地支配の時代のデータを幅広く分析した。

  • 「収奪型社会」:支配層が一般市民から搾取する「収奪型社会」では経済成長は長く続かない
  • 「包括的社会」:政治や経済面での自由や法の支配を確立した「包括的社会」であれば長期の成長を促す

以上を理論的に解明した。この研究の興味深いことは、経済成長が社会制度に支配されていることを理論的に実証したことである。さらに国家間の明暗が第1次産業革命を契機として急激に拡大した点も興味深い。イノベーションの成果は幅広い人々に恩恵が及ぶ社会のもとでこそ定着するという視点である。

一連の研究成果は、世界の課題や望ましい政策を検討する上で有意義である。例えば、中国の経済は高度経済成長を経て、現在苦境にあり、強権的な政治体制と経済の変革を長く両立させる難しさをこの理論では示している。さらにダロン・アセモグル氏らが懸念しているのは、民主主義の危機である。近著ではSNSが社会の分断を助長する現象や、人工知能の恩恵を一般の国民にまで広がらないリスクもある。まさに民主主義の各国は、いまこそ、真の包括的な社会の実現に向けての対策が必要だろうと社説は示唆している。🥇✒️📕📗💻💬⚡️🏙️💡🏗🚚📈🏢⚡️💹📖🖋🔑🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌏 happy01🇯🇵🇺🇸🇸🇪🇨🇳