音楽

【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「FINANCIAL TIMES:AI学習、素材への対価は」から

2025.3.5  日本経済新聞の記事「FINANCIAL TIMES:AI学習、素材への対価は」から

かつてのナップスター事件と異なり大企業が違法にIPを違法に利用

コラムの著者 ジョン・ソーンヒル氏(FINANCIAL TIMES イノベーション・エディター)によれば、英国を代表する女性ミュージシャンのアニー・レノックスやケイト・ブッシュなど100人を超えるアーティストが2月下旬、音のない(サイレント)アルバムの公開を支援したという。いわゆる曲に入っておらず、スタジオの雑音しかしない。この無音の抗議は大手テック企業による無断の作品利用に対するものである。日本新聞協会も2024年、AI企業による「報道機関の努力へのタダ乗り(フリーライド)が許容されるべきでない」との声明を発表している。

○抗議は新技術に関係法令の整備が追いついていない場合の典型

ソーンヒル氏によれば、抗議は新技術に関係法令の整備が追いついていない場合の典型であるという。巨大テック企業が自社の生成AIモデルの学習用にインターネットの中から素材データをかき集め、詩や画像、音楽、動画の模造品を次々に発信するようになった。このような状況を著作権法が制定された当時は夢想だにしなかった。模造品があまりに巧妙な出来なので受け手側は本物だと受け取ってしまう。しかし、いかなる人でも団体でも他人の知的財産(IP)から利益を得るべきではない。これは不可侵であると、ソーンヒル氏は強調する。

英国に限らずどの国も芸術や音楽、広告、デザインなどの価値創造産業は自国の経済には極めて重要であろう。ただ、この不可侵のIPを実社会にどう落とし込むか、AI時代に合うように著作権法をどう変えるかに諸国も苦慮している。

また、コンテンツクリエーターがIPによって収益が安定的に確保できる新規の経済モデルが必要であるのも課題である。これに対して幾つかのスタートアップが挑戦して試行している:

  • 米プロラタAI:質問回答エンジンの回答でコンテンツが使われる度にAI企業への収益の一部を制作者が受け取れる仕組みを作っている
  • 米トールビット:法的に不確実性を減らすために、コンテンツ使用料がAI ボットやデータ収集ツールからWEBサイトに直接支払われる仕組みをとっている
  • 英ヒューマン・ネーティブ:AI企業がコンテンツ制作者からデータのライセンス供与を受けられるような仲介市場を構築している

似たようなことが2000年、音楽共有サービス、ナップスターなどを消費者が使って音楽データを違法に共有した事件があった。著作権を顧みない楽曲のコピーや販売が急増し、レコード業界は大打撃を受けた。だが現代は当時と違って、コンテンツを違法に使用するのは個人やグループではなく、巨大で、れっきとしたロビー活動を行う企業であるという差がある。👩‍🎤♪🎧📺💬👦👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇬🇧🇺🇸


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「Deep Insight:『楽しい日本』が突く本質」から

2025.2.18   日本経済新聞の記事「Deep Insight:『楽しい日本』が突く本質」から

本質は画一性を排し多様性を引き出すこと

コラムの著者 小竹 洋之氏(日本経済新聞社 コメンテーター)は、「メキシコの漁師」という出所不明の寓話を取り上げ、今までの価値観に縛られることなく、もっと多様な幸せを追求すべきと説く石破茂首相だが、国内の評価は芳しくないという。だが、その本質は、日本の国力を高めつつ、国民のウェルビーイングを高めることは意外と難しく、諸外国に誇れる将来の姿かもしれない。

○日本で成長と幸福をどう両立させるか

小竹氏によれば、「メキシコの漁師」の話はこうだ:

「米国で成功を収めたビジネスマンが、旅行先のメキシコで漁師に出会う。漁師は毎日存分に寝て、目覚めると、生活に必要な分だけ魚を獲りに行く。仕事の後は子どもと遊んだり、妻と昼寝をしたり、友人と酒を飲んだりする。ギターや歌を楽しむこともある。

ビジネスマンは無欲な漁師に助言する。もっと魚を獲って売り捌き、水産会社を興して都会に進出し、上場後高値で売却してはどうか。金儲けの先に悠々自適の人生が待つと説く。

漁師はビジネスマンに、『自分はもうその悠々自適な生活をしている』と告げる」

石破茂首相の論考集にも同様の話が登場するという。つまり、「私たち日本人は、今までの価値観に縛られることなく、もっと多様な幸せを追求すべき」と説いている。明治維新後の「強い日本」、第2次世界大戦後の「豊かな日本」、そしてこれに続く「楽しい日本」を目指すというのだ。

だが、国内の評価は芳しくない。「軽薄」、「幼稚」、「優先順位が違う」といった散々な評価である。多くの人々が物価高に苦しんでいる中で、これからは「楽しい日本」と言われても違和感だけが残る。

改善の兆しが見られるとしても、稼ぐ力も投資の意欲も賃金への還元もまだまだ足りていない状況である。JTC(Japanese Traditional Company)と揶揄される伝統的な日本企業は、相変わらず過剰なリスク回避や前例踏襲の経営を脱しきれていない証拠も言える。

メキシコの漁師の寓話ではないが、日本で成長と幸福をどう両立させるか。大企業がグローバルで勝ち抜く「強さ」、地方の主要拠点への集住やサービス業の活性化で実現するローカルな「豊かさ」、そして、モノ消費からコト消費(観光、エンタメ、グルメなど)へ移行で得る「楽しさ」が、同時追求されねばならない。「楽しい日本」の本質は画一性を排除して、多様性を引き出すという点に尽きると小竹氏は指摘している。🍜💬💻🚗🚀🧑‍🔬👩‍🔬🔬👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵🇺🇸


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「生成AIが問う『声の権利』、無断動画が横行、俳優ら懸念、不競法で保護の議論も」から

2025.1.27  日本経済新聞の記事「生成AIが問う『声の権利』、無断動画が横行、俳優ら懸念、不競法で保護の議論も」から

「AIカバー」動画投稿があふれている

コラムの著者 瀬川奈都子氏、渋谷高弘氏(日本経済新聞社 編集委員)によれば、生成AIの普及で、人声の権利を保護するために議論が活発になってきているという。AIに無断で学習された声が意図していない利用が行われたり、仕事を奪ったりすることで声優などが懸念していることがきっかけとなっている。権利保護とイノベーションを両立させることの模索が始まっているという。

○声の保護に関する法改正は海外が先行

コラムの著者らによれば、生成AIの発展で急増した動きを、俳優らは懸念をしているという。2024年11月、日本俳優連合など3団体が以下のルールを求めて記者会見を行ったという:

  • 生成AI音声を吹き替えで使わない
  • AIに声を学習させる際には本人の許可をとる

現状、日本国内の法律で声の保護を目的としたものはない。また裁判所の判例もほとんどない。

一方、東京地方裁判所の中島基至判事が、知財訴訟の担当から論文で「人声権」という法的概念を展開している。人声権は人格権に由来する権利だという。さらに、現行法の解釈だけにとどまらず、事業者間の公正な競争の確保が目的の不正競争防止法の改正が現実的だとする動きもある。

ただ、不正競争防止法の改正によっても同法の罰則規定があり、イノベーションを阻害するとも考えられる。海外では、エンターテイメント産業が盛んな米国や韓国で立法が日本よりも先行している。この縛りとイノベーションの位置付けが重要で議論すべきところとなろう。🎤🏢🔥🌳🎓💡♪💬📻⚡️🏙️💡🏗🚚📈🏢⚡️💹📖🖋🔑🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇺🇸🇯🇵


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「<NEXT Unicorn>多様な人材で世界に挑む」から

2024.12.7  日本経済新聞の記事「<NEXT Unicorn>多様な人材で世界に挑む」から

グローバルに戦える魅力的な企業育成が不可欠

コラムの著者は、日本経済新聞社による「NEXTユニコーン調査」をもとに、有力なスタートアップの増加ペースと企業規模での課題などについて考察をしている。

○起業家の視野を広げ、多様な人材を活用する仕組みづくりが必要

コラムの著者によれば、企業価値が500億円以上、10億ドル未満の未上場企業である「ユニコーン予備軍」は14社だという。ただ、こうしたユニコーン予備軍やユニコーンに成長する企業を増やすことを日本としては促進しないと、世界の投資マネーは興味を抱かない。そのためには、ユニコーン企業の起業家の視野を広げ、多様な人材を活用する仕組みが欠かせないと言う。

そこでコラムの著者は北欧にそのヒントを求めている。SAS(スカンジナビア諸国)のスウェーデン、フィンランドなど北欧6カ国の人口は約2900万人で日本の4分の1で、ユニコーン数は2024年9月で18社と、日本の5社と比べて3倍強である。人口100万人あたりのユニコーン数は米国を除くと世界最高水準で、スウェーデンの音楽配信会社スポティファイなどの成功事例も多い。

その要因はまとめると、

  • 大学を中心とする起業家教育が充実
  • 男女問わず、起業に挑戦する風土がある
  • 大企業への就職だけでなく、起業やスタートアップをキャリアの選択肢に入れている
  • 社会人のリスキリングや育児支援も充実
  • キャリアの途中で企業を退職し、起業することも一般的である
  • 自国の市場が小さいが故に、当初からグローバル展開を意識している起業家が多い

と、日本のスタートアップ育成のエコシステム構築はまだまだ道半ばであるという。🚜🍓🍅🥦🎓💡♪💬📻⚡️🏙️💡🏗🚚📈🏢⚡️💹📖🖋🔑🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵🇸🇪🇫🇮🇳🇴🇩🇰🇺🇸


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「Deep Insight:強いロボット、弱いロボット」から

2024.11.19   日本経済新聞の記事「Deep Insight:強いロボット、弱いロボット」から

強いロボットは万能であるかは未知数だが、産業競争力は抜群

コラムの著者 中山 淳史氏(日本経済新聞社 コメンテーター)が、書店で思わず手に取ったのは「<弱いロボット>から考える」(岡田美智男(豊橋技術科学大学教授・ロボット開発者)著)であった。ストロング、スーパー、ハイパーやギガなどの横行する現代にアンチテーゼのような視点の著書である。むしろ日本は戦後、この弱さをバネにしてのし上がった。来るべき強いロボットの時代にどう生きるべきかを中山氏は考察している。

○過去、PCが米国を、スマホが米国、韓国、中国をの成長を牽引した

中山氏によれば、岡田教授の弱いロボットとは、

  • 自分だけでは作業が完結できない掃除ロボット
  • 子どもに読み聞かせをしている最中に「次どうだっけ?」と話を忘れてしまうロボット

といった、不完全で頼りない機械ばかりだが、健気で微笑ましい。岡田教授によれば、

「AIが何でもできてしまえば、人間はすることがなくなる。人間が機械を補完できるようにプログラムし、両者がゆるく依存し合う関係こそが社会をしなやかに保つ秘訣」

という。これに対して米国はトランプ次期政権で逆の雰囲気で強いロボットを目指している。最近の米国発のニュースにはストロング、スーパー、ハイパー、ギガなどの言葉で溢れていると言う。米モルガン・スタンレーによれば、AI学習などに使うクラウドコンピューティングへの世界の設備投資額は2025年に2887億ドル(約45兆円)に達し、人類を月に送った米アポロ計画への累積投資額を超えるという。さらに全体として生成AIへの開発投資はアポロ計画の約30倍に膨らむとの予測もある。

米国のみならず2位の中国も強いロボットを志向すると思われる。となれば日本企業はどうか。このまま強いロボット国から脱落するのか。

確かに強いロボットが万能かどうかは未知である。しかし、産業競争力を牽引することは間違っていないと、中山氏は説く。かつてのテレビやオーディオが日本を、ウィンテルのPCが米国を、スマートフォンが米国や韓国、さらに中国の成長を牽引してきた。やはり日本経済にも強いロボットが必要である。では、なぜ、次の技術がうまれないのか。

岡田教授によれば、弱いロボットを作っていたころの好奇心や冒険心を忘れてしまっているのではないかという。ホンダやソニーも創業時は、身の回りのありあわせや払い下げ物資まで活用して強いものを作り上げていった。競争から脱落しないためにも、弱かった時代の精神を遡るのも一手だと中山氏は勧めている。次に来る新しい価値観を先取りした米中に負けない、強いロボットを見出す時は今であろう。🤖🚗🚀🧑‍🔬👩‍🔬🔬👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵🇺🇸🇨🇳