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2017.7.4   日経産業新聞の記事「TechnoOnline:熾烈な智の闘い、批判なきところ進歩なし」から

サイエンスは事実の価値だけで闘う

コラムの著者 和田 昭允氏(東京大学名誉教授)は、学問の最前線ではたくさん投げられてくる批判と闘いながら進んでいることを自分の体験を通じて語っている。

◯闘いのやり取りは科学史上の重要書簡に

 

和田教授の事例は痛快である。教授の専門である生命を対象とする物理計測を研究開発していたころの話である。

1970年代の早い時期に人類にとって最も大きな意義のあるこのテーマに挑戦すると決意したそうだ。1983年に世界初のDNA高速自動解析の論文を著したという。ある国際科学雑誌に投稿したところ、編集長から連絡が来てそこには査読者(レフリー)の意見が記してあった;

  • 「このDNA自動解析装置は専門家による解析のレベルには達していないから却下すべきである」

サイエンスは批判なきところに進歩なしの世界である。和田教授はこの意見に闘志を燃やし、反撃に転じた。編集長に

  • 「彼のコメントは、自動車や機関車の発明当時『この機械は馬のように自由に走れないから駄目だ』と言ったに等しい。科学技術は人間の優れた能力を機械で置き換えてきた歴史でもある。彼の意見は、DNA自動解析機の真価を理解できなかった研究者もいたと言うことで、歴史に残すべきものである」

と書いて送ったという。さらに別の科学雑誌に以下のような手紙をつけて投稿した;

  • 「この論文は、他の科学雑誌に投稿したものですが、不幸にしてレフリーの無理解のために却下されたものです。ここに、私と編集長との意見のやり取りはのコピーを同封します。もう少し大所高所に立って、革新的な発想を理解出来るレフリーを選んで審査してください」

これに対して、

  •   「前のレフリーはこの論文の真価を理解していない。無修正でこのまま出版すべきである」

と返答がきた。

和田教授のこの書簡のやり取りは、科学史上の重要書簡を保管しているシカゴの米国公文書館に送られ、本当に歴史に残された。

サイエンスでは事実の価値だけで闘うことができる、痛快なもののようだ。🔬💡💻🏢🌎happy01

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