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【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:半導体の新指標、デバイスからシステム主導へ」から

2016.7.1  日経産業新聞の記事「TechnoOnline:半導体の新指標、デバイスからシステム主導へ」から

回路の線幅の細密化から新製品や新サービスを生み出すシステム主導へ

コラムの著者 志村 幸雄氏(技術評論家)は、半導体業界で「国際半導体技術ロードマップ(ITRS)」を発表してきたITRS委員会の解散後、5月にIRDS(デバイスとシステムに関する国際ロードマップ)の発足が新たな業界の羅針盤になるかどうか注目している。

◯元は米半導体工業会(SIA)から

ご存知のようにSIAは、米インテルの共同創設者、ゴードン・ムーア氏が提唱する「ムーアの法則」(集積度が1から2年で倍増する経験則)からきた。それが米国のみならず、欧州、日本、韓国、台湾に同様な組織体を結集したものが、ITRSであった。

しかし、2001年、当初の目的を終えたとして解散。羅針盤を失った業界は、プロセッサーやメモリーの高集積化を主眼とした「モア・ムーア」派の米国とシステム・オン・チップやセンサーなどの機能の多様性に重点を置いた「モア・ザン・ムーア」派の欧州で分離。しかも、金科玉条としていたムーアの法則も物理的限界が見えてきた。そこで、5月にIRDS(デバイスとシステムに関する国際ロードマップ)の発足。

これによって回路の線幅の細密化だけでなく、新しい商品やサービスを生むシステム主導に舵が切られた。システムの視点に立てば、デバイスレベルとシステムレベルの双方で、省電力化を進め、機能の拡張や処理能力の向上を図れる。こうした動きが半導体業界の主流になるか、注目すべきと志村氏は示唆している。pchappy01


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「眼光紙背:オバマ大統領と『もんじゅ』」から

2016.6.30  日経産業新聞の記事「眼光紙背:オバマ大統領と『もんじゅ』」から

核不拡散で関連

オバマ米大統領が被爆地の広島を訪問した5月27日に文部科学省の有識者会合から1つの報告書が提出されたという。コラムの著者は、この報告書で取り上げられている高速増殖炉『もんじゅ』の運営主体について触れている。

○中国はもんじゅの取り扱いによっては日本が核保有国になると警告

報告書のタイトルは『もんじゅの運営主体の在り方について』で、原子力規制員会の勧告に対する報告書である。高速増殖炉原型炉もんじゅの運営を担う新しい組織を示したものだという。

先の話題でオバマ米大統領は核廃絶を訴えた。核廃絶に欠かせないのは、原爆の原料となるプルトニウムの厳重な管理である。日本は核非保有国の中で最も多いプルトニウムを保有する。つまり、民生用プルトニウムで、使用済み核燃料を再処理するために必要なもので、その中心がもんじゅである。炉心にはウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)を装填し、燃焼後には核兵器級を超える高純度のプルトニウムを生み出すものである。ある意味で、核兵器燃料の製造装置にもなりかねないとして、中国政府はもんじゅの在り方によっては日本が核保有国になると警告している。

もんじゅの存廃と核廃絶とはこのように密接な関係にある。camerahappy01


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「高岡美佳の目:エコ弁プロジェクト、丸の内、容器回収手軽に」から 

2016.6.30   日経産業新聞の記事「高岡美佳の目:エコ弁プロジェクト、丸の内、容器回収手軽に」から

エコは環境配慮の意識と共に日常生活で取り組みやすい仕組みにも注目

コラムの著者 高岡 美佳氏(立教大学経営学部教授)は、三菱地所が丸の内で進めている弁当の容器のリサイクルについて触れ、エコロジーの要点について語っている。

○実証実験後に本格実施

5月30日に三菱地所が丸の内エリア(大手町、丸の内、有楽町)で販売されている弁当にリサイクル容器を利用し、回収・リサイクルを行う「丸の内エコ弁プロジェクト」を本格的に始めた。昨年10月から11月に行った実証実験で、容器回収率20.8%と良好であったためである。

デベロッパーとして複数の店舗と連携し、地域一体で弁当容器のリサイクル活動を推進する取り組みは日本初だという。

丸の内は日本有数のオフィス街。昼間23万人が働き、年間約260万個の弁当が販売されていると同社の調査で分かった。しかし、リサイクル率は低かった。そこで;

  • 手軽に実行;多忙な就業者の手間を考え、表面にフィルムだけをはった容器を使用。食後にフィルムを剥がし、フィルムと蓋は廃棄ボックス。容器は回収ボックスに返却。
  • 回収ボックスの数と設置場所;食べる場所と回収する場所が近いことを配慮。そこで同社のデベロッパーとしての役割を使って複数のビルの各階に共通の回収ボックスを設置出来た。

このような方策によって就業者の環境配慮意識の高さを支え、さらに日常生活に取り組みやすい仕組みをつくりつつある。丸の内エリアでエコ弁が当たり前となることを目指しているという。cafehappy01


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:19世紀日本の科学技術、教育制度、欧米が絶賛」から

2016.6.28  日経産業新聞の記事「TechnoOnline:19世紀日本の科学技術、教育制度、欧米が絶賛」から

日本の大躍進、ペリーが予言

コラムの著者 和田 昭允氏(東京大学名誉教授)は、米国のペリー提督が著した「日本遠征記」で述べた日本人の探究心と優秀な技能を紹介し、パリーが日本の将来のついて予言していた事実から、当時のエンジニアリング教育の制度の優秀さに触れている。

◯東洋の端にあって、かるかに遅れた近代化に乗り出した日本を最先進国の英国がモデルにしていた

和田教授によると、ペリー提督の著書で以下のような内容があるという;

  • 日本人は探究心と技能に優れた、世界でもまれな人たちだ。必ずや世界に雄飛するだろう
  • 日本人は非常に巧緻な技術を持ち、彼らの技術の完全さは素晴らしい。日本人は最も成功している工業国民にいつまでも劣っていないだろう
  • 彼らは間もなく、最も恵まれた国々の水準にまで達するだろう。日本人が一度文明世界の技能を持ったならば、強力な競争者として、将来の機械工業の成功を目指す競争に加わるだろう

1世紀先をぴたりと予言んしたペリーの鋭い洞察力も素晴らしい。さらに、ペリーを感心させた日本人も只者ではない。

多くの科学雑誌の中で権威のある英国のネイチャー誌が1877年に、当時の英国と欧州のエンジニアリング教育について示唆を与えているという。それは、ペリー提督が予言した日本で生まれた工部大学校(東京大学工学部の前身)とエンジニアリング教育について対比している点である。

  • エンジニアリング教育は国家の重大事であるにも関わらず、英国は組織的エンジニアリング教育で遅れている。若者に対しては手作業の訓練ばかりで、理論的な教育がない。
  • 一方、欧州大陸では正反対に、理論ばかり教えて実習させていない。エンジニアリングには、サイエンスと実体験の両方がひつようなのだ
  • エンジニアリング教育において英国と欧州諸国が、このようにはるかに遅れてしまっている間に、日本政府は東京帝国大学において、高度の科学的訓練と工学実習を組み合わせた、偉大なエンジニアリング教育制度を完成させた

と紹介している。

まさに当時新興国であった日本を最先進国の英国がモデルにした。歴史が証言するこの「智と技のDNA」とそのバランス感覚を、今の日本人も学べるのではないか。pchappy01


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:エントロピー、『曖昧さ』科学的に示す」から

2016.6.24  日経産業新聞の記事「TechnoOnline:エントロピー、『曖昧さ』科学的に示す」から

生命はエントロピー増大の法則に反する?

コラムの著者 和田 昭允氏(東京大学名誉教授)は、熱力学の大きな抽象概念であるエントロピーについて語っている。

◯熱力学の第2法則

和田教授によると、エントロピーの定義について;

  • 熱平衡にある孤立系で
  • 吸収した微小熱量を
  • その系の絶対温度で割った値

がエントロピーの「増加分」である。さらに熱力学の第2法則;

  • 可逆変化ならば、エントロピーは一定、不可逆変化なら必ず増大する

である。

熱量や温度でイメージが湧きにくいこのエントロピーをオーストリアの物理学者ボルツマンは、気体分子の運動論から出発して統計力学で意味づけた。つまり、熱平衡をそれを構成する原子・分子の運動論と確率論に基づいて記述した。熱量は原子・分子の運動であることが直感的に分かり、その動きも確率論的にばらばらであることをいう。

ボルツマン原理によると、マクロ系のエントロピーは、それを持つ「ミクロ状態の数の対数」に比例するという。状態の数が増えるということは、選択の曖昧さが増え、エントロピーとは要するに、「曖昧さ」を科学的に表す量であることがわかる。

こうした科学的な「曖昧さ」を導入したのが情報理論の父と呼ばれる米国のシャノンで、情報エントロピーとして定義した。これは出現確率が多いほど情報量が逆に少ないといったものである。となると、「生命は情報の具現化である」といわれるように、曖昧さを排除した構成であることから、低い曖昧さ=低いエントロピーで、生きている限りは生物は低いエントロピーを保ち続けることになる。つまり、エントロピー増大の原理に反するのではないかと思える。

しかし、よくエントロピーの定義を見直すと、この原理は孤立系で成立することであり、他からエネルギーをとれば、エントロピーを下げることができる。外部から物質を取り込むことで運動の力学エネルギーを補充し、体内で常に余剰のエントロピーを処分することで、構造の秩序を保っているとも言える。pchappy01