事例

【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「Deep Insight:グーグルは第2の『ベル研』か」から

2024.10.26   日本経済新聞の記事「Deep Insight:グーグルは第2の『ベル研』か」から

米AT&Tを彷彿とさせる最近のGoogle

コラムの著者 村山 恵一氏(日本経済新聞社 コメンテーター)は、2桁のノーベル賞受賞者を輩出したベル研究所の研究環境や親会社の米AT&Tの当時の状況を彷彿とさせる、米Googleについて同じ轍を踏まないためにも米新政権は競争政策とAI規制など難問を解かねばならないと感じている。

○2024年のノーベル賞はAIの分野で米Googleの関係者3人が受賞

村山氏によれば、2024年のノーベル物理学賞はAIの分野でジェフリー・ヒルトン氏(トロント大学)で2023年まで米Googleに所属し、化学賞のデミス・ハサビス、ジョン・ジャンパー両氏はGoogleの持株会社、アルファベット傘下のグーグルディープマインドで、それぞれCEO、ディレクターを務めているという。

興味深いことに、Googleの研究環境について、ハサビス氏は「黄金時代のベル研究所に触発された。似たものをつくりたかった」と語ったという。

ベル研究所は1925年、米AT&Tが創設した。現在は業界再編でフィンランドの通信機器大手ノキアの傘下にある。同研究所にはトランジスタやレーダー、太陽電池、通信衛星など産業界に大きな貢献をした成果がある。研究所は、専門分野の壁を越えた交流でアイデアを育ててきた。数学者、化学者、材料科学者、冶金学者、エンジニアなどが同じ研究所で交流したという。

さらにこの研究所の特徴は、潤沢な研究開発費が親会社のAT&Tから提供され、研究者は息の長い研究にじっくり取り組める自由があったという。こうした研究環境が2桁のノーベル賞受賞者を輩出した。一方、グーグルディープマインドはベル研究所を規範として、機械学習やAI、工学、物理学、生物学、哲学などの世界的権威が集まっている。資金もベル研究所と同様に設立4年後のお2014年に収益力のあるGoogleに買収された。

研究環境に非常に似通っているベル研究所とグーグルディープマインドだが、親会社の悲哀も似通ってきている。Googleの検索サービスは反トラスト法(日本でいう独占禁止法)違反だとする米司法省が、独占の是正案を裁判所に提出した。提案には会社分割や事業の売却が含まれている。かつて1974年司法省はAT&Tに対して反トラスト法訴訟を起こし、1984年にAT&Tは分割された。ベル研究所もリストラや人材流出で、かつての輝くを失っていった。

もちろん、GoogleはAT&Tの轍を踏むことは回避したいだろう。多くの巨大テック企業が独禁裁判に直面している。だた、中には米国内の巨大企業が独禁裁判で弱体化すれば、テック覇権を狙っている中国に利を奪われかねないとの声もある。課題はノーベル賞を取るような企業の解体をどう向き合うべきかであり、受賞が免罪符ではなく、冷静と公正で判断する必要があるときだ。🚀🧑‍🔬👩‍🔬🔬👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇺🇸


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(8)、人間と機械が支え合う社会」から

2024.10.23   日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(8)、人間と機械が支え合う社会」から

人間・機械複合系の社会システムの創造

コラムの著者 佐々木裕一氏(東京経済大学教授)は、これまでのソーシャルメディアの特徴から社会との関わりを考察している。動画共有などが小グループで行われ、社会的に重要なニュースに多くの人々が触れる時間が減り、政治的な理性的な議論や政治執行の監視は今よりも弱くなると佐々木教授は予測している。

○機械の系の優勢を技術と規制でアンバランスを解消する

佐々木教授によれば、予測も重要であるが、どのような社会を中長期的に創るかがより重要であるという。佐々木教授はグロリア・マーク氏(米カリフォルニア大学アーバイン校 総長特任教授)の次のように引用している:

「私たちはデジタル世界を創造している最中である(それも初期の)」

この創造過程で、佐々木教授は人間という生物的な系と機械の系が互いに良好な影響を与え合う、「人間・機械複合系」の社会システムを創るという意識を各自が持つ必要があるとしている。

また、創造過程で「情報」自体を分類する必要があるかもしれない。西垣通氏(東京大学名誉教授)は生命情報・社会情報・機械情報に情報を分類している。生物(人間)が感じる生命的活動の生命情報、その生命活動と不可分な価値、言語などで他者へ伝える情報、コンピュータが扱う形式的データの機械情報である。

この中で社会情報はソーシャルメディアを通じて劣悪な内容も含め増加の一途である。このため、前々回紹介のあった、「システム1」「システム2」で説明すると、私たちが「システム2」によって生命情報を生む出すことが難しい状況にある。また、「システム1」が中心となる人間の心理的弱点につけこんで、機械情報がアテンション獲得のためにコンテンツを選別するようになってきている。

人間系と機械系の2つの系の接面(インターフェース)には生成AIなどのサービスが入り込むであろう。我々は自らの弱点をを認識して、技術や規制を使いながら圧倒的な機械系とのバランスを取る必要があると佐々木教授は警告している。🫶💬🛠️🛜💬📱👦👧💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「私見卓見:解雇規制の緩和へ議論を深めよ」から

2024.10.22   日本経済新聞の記事「私見卓見:解雇規制の緩和へ議論を深めよ」から

時代に合わせた適切な解雇条件を見直し日本経済の再生に

コラムの著者 井野 靖久氏(名古屋大学 未来社会創造機構 特任教授)は、解雇規制を企業による労働者の一方的な切り捨てと思いがちであるが、そうではなく、日本経済を再生するために現代の労働環境に合った適切な条件を見直そうという視点で提唱をしている。

○人手不足が深刻化していく中で失業の増加を過度に恐れることは健全な労働環境とはいえない

井野教授は、まず日本経済の再生には労働環境の流動性を上げなければならないと説いている。現在の解雇規制はあくまでも正規雇用だけを対象としたものであり、非正規社員は現在でも不安定な雇用環境に置かれている。正規雇用の職を希望しても、ポストに空きが出なければ採用の機会は限定的である。正規と非正規の待遇格差を縮め、人材の入れ替えの可能性を高めていかねば公正な社会とはいえない。

また、一方で人手不足を招きながらも失業への過度な恐れは健全な労働市場ができていない証拠である。今や転職市場も拡大しており、企業内に人材をとどめておくことも難しくなってきている。解雇規制が緩和されても、多くの企業が人員圧縮を進めるなどと考えない方が良いと井野教授は指摘している。さらに単純に解雇規制を緩和しても多くの副作用が考えられる。雇用を安定させるために、失業者のスキルアップの支援、労働市場のマッチング機能の向上、不景気の際の新たな雇用機会の創出を日本政府が適切にできれば、失業への恐怖は緩和されるはずである。

労働市場の流動性を高め、人材の適材適所の配置を実現することは、結果として生産性の向上や所得分配の適正化に役立つ。実質賃金を経済の活性化を進めるために継続的に高めていくにも、労働市場の変革が必要だと、井野教授は主張している。🪜❤️👦👧💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(7)、データが支配する巨大市場」から

2024.10.22   日本経済新聞の記事「やさしい経済学:ソーシャルメディアの光と影(7)、データが支配する巨大市場」から

消費者の関心を奪い合うアテンションエコノミーという巨大市場

コラムの著者 佐々木裕一氏(東京経済大学教授)は、前回に引き続きソーシャルメディア事業者が儲ける仕組みについて語っている。

○現在はテクノロジーとデータによる「新しい封建制」時代

佐々木教授によれば、「新しい封建制」は、中世の封建制が土地と農業が基盤であったように、ソーシャルメディアの時代ではテクノロジーとデータで基盤を作っていると、ショシャナ・ズボフ名誉教授(米チャップマン大学フェロー)が名付けた。巨大テック企業がネット経済を牛耳っているからである。

巨大テック企業やソーシャルメディア事業者の儲けは、広告宣伝費が主で、2023年10月〜12月の四半期では米Googleの親会社のアルファベットとメタ(旧Facebook)の2社だけで約1040億ドルの広告収益を上げている。このような企業は、多くの利用者に広告を見てもらうために、利用頻度を上げ、長時間そこに止まらせる戦略を持っている。仕組みは検索連動広告の登場で誕生し、大規模データベースを用いて閲覧時に自動で広告を表示する。多くの広告は、個人の属性や状況に合わせたものとなっている。「情報が余剰化すると関心が希少化する」とノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモン氏が予見した。実際、その予見は的中し、希少となった我々消費者の関心がどこにあるのかを奪い合う、アテンションエコノミーが生まれ、巨大市場となった。

木のような巨大テック企業の経済を握るような行為に欧州でを中心に規制的な対応が進んでいる。2018年施行の一般データ保護規制(GDPR)では、個人データを扱う厳格なルールが定められ、利用者をコントロールして欺く可能性を持つデザインも禁止された。また、公正な競争市場を確保する観点から、デジタル市場法(DMA)が2023年に施行された。日本国内でも事業者の自主規制だけでなく法的な規制も進める方針が、総務省などが打ち出している。🛜💬📱👦👧💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01🇯🇵🇺🇸


【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「スタジアムが変わる:『見る場所』から『行く街』へ」から

2024.10.22  日本経済新聞の記事「スタジアムが変わる:『見る場所』から『行く街』へ」から

スタジアム城下町の繁栄にはチームが地域に愛され、応援される存在が必要

コラムの著者 北川 和徳氏(日本経済新聞 編集委員)は、人口減少や流失に悩む地方都市で、スタジアムを中核とした新たな街づくりに注目している。これまでのスポーツ観戦だけを楽しむ場所から変わろうとしているという。多くが莫大な投資による事業化で、「スポーツによる街づくり」も加速しそうだと語っている。

○莫大な投資回収には「訪問の多目的化」がキー

北川氏によれば、今月14日に開業した長崎スタジアムシティ(長崎市、NSC)はJリーグ長崎の本拠地「ピーススタジアム」を中核としたおよそ7.5ヘクタールの「街」であるという。スタジアム以外にアリーナやホテル、レストランやショップを併設し、温浴やアミューズメント施設、学習塾や企業向けオフィスも完備しているという。

また、昨年開業した、北海道北広島市の北海度ボールパークFビレッジはNSCより約32ヘクタールとスケールが大きい。プロやキュ日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールド北海道」が中核で、まだ開発途上である。学生数約3500人の大学キャンパスやJR北海道の新駅の設置も決定している。

まるで現代版の城と城下町の形態で、人と投資を呼び込み相乗効果を生もうという狙いである。その収益で課題なのは、試合がない日の集客で、プロスポーツでも試合数の多い野球でも本拠地での試合は年間70試合程度である。Jリーグは20試合にとどまり、これだけでは厳しい。そこで来訪する目的をスポーツ以外に多角化する必要がある。グルメやショッピング、エンタテインメントといったスポーツに限らない多彩なイベントを開催し、「賑わい」を創出する必要がある。

「賑わい」は中核となるスポーツチームへの地元応援や支援、そして愛情を注ぐ対象にならねばならない。⚽️🥎🛒🛍️👚🥿🏟️👩‍🦯🏢💬👦👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍happy01