【ヒット商品のネタ出しの会】 日本経済新聞の記事「私見卓見:『サイロ化』に潜む新たな危険」から
2024/09/08
2024.9.5 日本経済新聞の記事「私見卓見:『サイロ化』に潜む新たな危険」から
専門性よりも一般常識が重んじられた時代は終焉
コラムの著者 小林 暢子氏(EYジャパン パートナー)は、企業が直面する課題の複雑化が元になって、これまでも問題視されてきた組織間の厚い壁がコミュニケーションを阻む「サイロ化」が新たな種類の危険を引き起こすことについて警鐘を鳴らしている。
○「リスクを最小化するには、何もしなければ良い」という最悪のシナリオが発生
小林氏によれば、確かに大企業において、組織間の壁でコミュニケーションが悪く「サイロ化」することは今までも問題視されてきたという。例えば、社内の意思疎通の齟齬だけでなく、社外にも及び、同じ取引先に違う部署から別々に接触するといった失態が起こる。だが、近年は、ビジネス環境の複雑化やこれに対応する課題が要因となって、サイロ化が新しいリスクを招くことがあるという。
課題の複雑化に対応するため企業はスタッフに専門性を求めることになる。そのため、企業がリスク管理、サステナビリティー(持続可能性)、D&I(多様性と包摂性)といった新部門を充実させ、専門性を高めていった。
小林氏が問題視するのは、サイロ化によって組織内の意見が部分最適(その組織内のみに通用する解決策)に陥り、偏った論理が、部分最適を擁護する論理に刷り変わって、他の部署からの攻撃を防ぐ「武器」となることであるという。つまり、企業全体として生かすべき事案が潰されたり、全体最適(全社的に通用する解決策)が損なわれてしまう恐れがあるという。例えば、リスク管理を重視するあまりに、極端に言えば、「リスクを最小化するには、何もしなければ良い」という極論に陥ってしまう。
これまではビジネス環境の変化が比較的遅く、企業運営においても専門性よりも一般常識が重視されたが、昨今は専門化が進み、隣の部門であってもお互いのものの見方がわからず、共通言語が失われていく。さらに声高な一部門による、一見最もらしい論理で他部門への「武器」として働くと手がつけられなくなり、暴走する危険性がある。
このような新たなサイロ化のリスクに対して、小林氏は、経営トップに今以上に部分最適に惑わされないバランス感覚をもった判断が必要となると示唆している。世界市場のトレンドも専門性偏重に向かっているが、日本に普及し始めたジョブ型人事も、専門性を軸に考えがちである。サイロ化が進むリスクを考えると、あえて専門性に逆らい、バランス感覚をもった幹部の育成が求められるのではないかと、小林氏は提案している。👓💬👦👧📈💰📓🗺️🚢🩺💉🏢⚡️🎓👔⏰🔧💻🖥📻🖋🌏💡🔎🌍🇯🇵