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【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「風向計: スマホアプリ、日中は起動時間短尺」から

2016.5.31   日経産業新聞の記事「風向計: スマホアプリ、日中は起動時間短尺」から

コミュニケーション利用はエンターテイメント利用より優先されやすい

コラムの著者 奥 律哉氏(電通総研 メディアイノベーションラボ統括責任者)は、内閣府が3月「消費者動向調査」と調査会社インテージの「i-SSPモバイル」というデータを使って、スマホアプリのマーケティングについて考察している。

○スマートフォンの普及率が従来型携帯電話のそれを超えた

内閣府の調査からでたのは初めて、スマートフォンが二人以上の世帯で普及率の面でガラケーを超えたことである。ここにマーケティングを考える上でも、個人の手元に情報を届けるスマートフォンに注目が集まるのは自然である。

奥氏が紹介している調査会社のインテージの「i-SSPモバイル」というデータでは、

  • 全国15~69歳の2015年7月の利用ログデータ
  • 主なアプリ分野の1回あたりの利用時間(尺数)
  • 対象はアンドロイドOSとiOS

を分析したものである。結果、1回あたりの利用時間を短い順でみると、

  1. インスタントメッセンジャー(1.2分)
  2. ショッピング(1.8分)
  3. 写真/ビデオ(1.9分)
  4. ソーシャルネットワーク(2.3分)

となっているという。つまり、ショッピングを除くと、コミュニケーションを目的とするアプリである。

一方長い順から見ると、

  1. 動画共有(8.3分)
  2. 動画配信(6.0分)
  3. ゲーム(5.3分)
  4. ブック/コミック(4.7分)

となっている。エンターテイメントを楽しむアプリが占めている。

これから、コミュニケーション利用はエンターテイメント利用より優先されやすいという点で、前者は相手のあることからタイミングが得れべないが、後者は自分でTPOを選べるという特徴を持つ。さらに、日中はコミュニケーションを優先し、短尺で、エンターテイメントは、長尺でSIMカードでは通信料金がかさむため自宅でのWifi 環境でじっくりと楽しむようだ。

この分析は今後消費者向けアプリや関連商品のマーケティングを考える上で参考になりそうだ。camerahappy01


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「三浦俊彦の目:日本アニメの魅力、『共感』異文化にも浸透」から

2016.3.31  日経産業新聞の記事「三浦俊彦の目:日本アニメの魅力、『共感』異文化にも浸透」から

フランス・オタク第一世代の作家が語るサブカルチャーの起源

コラムの著者 三浦 俊彦教授(中央大学商学部)は、前回の意味記憶、エピソード記憶の話に続き、日本のサブカルチャーの起源についてフランス人からみた考察について触れている。

○アニメを日本製だから見たのではなく、面白いから見たら日本製だった

三浦教授は、昨年出版されたトリスタン・ブルネ氏著の「水曜日のアニメが待ち遠しい」(誠文堂新光社)が面白いという。同氏はフランス・オタク第1世代と自称し、フランスにおける日本アニメ受容の歴史を分析する中で日本のサブカルチャーの魅力について読み解いているという。

ブルネ氏の分析によると、日本アニメがヒットした理由は、作者と視聴者、読者の「共感」の強さにあるという。初めから強いヒーロー像よりも、視聴者や読者と同じ人間として描かれ、時に悩み、争いながらも成長していくところに共感を得たからだという。

さらに物語論では、物語の魅力は自己移入(物語の世界観に入り込めるか)、感情移入(登場キャラクターに感情移入できるか)に依存する。その中で通常の人間と同じ成長段階を共有し、共感出来るのだという。共感は、自分の体験を記憶するエピソード記憶に他ならない。

政府のクールジャパン戦略は、サブカルチャーの扱いで誤っているという。日本アニメは日本製だから見たのではなく、面白いと思ってみたら日本製だったというのが正しい。ジャパンだからクールだよ、というのはステレオタイプでそんなに単純じゃない。

日本人が、ブルネ氏の視点で分析することで、全く異なる文化をどう受容していくかのプロセスがわかる。pchappy01


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「TechnoOnline:情報構成に残すには、保存・再生しやすい技術を」から

2015.12.11   日経産業新聞の記事「TechnoOnline:情報構成に残すには、保存・再生しやすい技術を」から

100年、1000年先に耐えうる技術は確立されていない

コラムの著者 山﨑 弘郎氏(東京大学名誉教授)は、デジタル技術は大量の情報を圧縮し、記録、保存する点で大きな進歩をもたらしたが、100年、1000年の将来まで保存し、伝えられかどうかは疑問だという。

◯電子媒体の弱点

デジタル記録された情報を読み出すためには専用のハードウェアとそれを駆動するソフトウェアが必要だが、すでに30年ぐらい前のフロッピーディスクを読みのは容易ではないという。同じ世代間でも情報を伝えられるが困難だから、世代が変わればさらに難度が上がる。

大量のデータを長期保存を実現するには高密度化はもとより、データの安定性が必要である。つまり、情報の長期にわたる不揮発性と保存のためにエネルギーを消費しないことが必要不可欠といえる。現在の光記録は容量の点では有利だが、外部からのノイズに弱い。さらに、読み出し側も電子辞書のような変換方式は便利であるが、100年、1000年先では可能かどうかまだわからない。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「流行を読む:『短文文化』の時代、情報凝縮、的確に伝える力」から

2015.12.11   日経産業新聞の記事「流行を読む:『短文文化』の時代、情報凝縮、的確に伝える力」から

文科省の共通入試にも

コラムの著者 関沢 英彦氏(博報堂生活者アカデミー顧問・東京経済大学教授)は、米国のネットジャーナリズムが短文と視覚表現に移りつつあることを語っている。

○短文に情報を圧縮する能力が求められる

米国CNNなどの既存メディアが動画共有アプリ「スナップショット」にコンテンツを提供する新サービスが伸びているという。アイコンを選び、縦横に画面を動かすだけで、様々なメディアの記事・動画が見られる。ポイントは、画像(視覚表現)と短文で構成されている点である。凝縮された情報のデザインとなる。

ニュースサイトVOXも、情報の分野ごとに短文のカードにまとめ、関心があれば次のカードを読むという形式で、一瞬にして内容が伝わる点が特徴である。

もはや長文で初めて趣旨が伝わるような悠長さは許されず、的確な短文が求められ、教育では、大学入試で短文記述問題、企業では、多ヶ国語自動翻訳に耐えるために誤解のない短文で書く力が求められるという。

短文は日本文化の短歌や俳句ではないが、得意とする部分で、さらにこれに静止画や動画の視覚表現がつけ加わる。短文文化のブームが到来しそうである。


【ヒット商品】ネタ出しの会 日経産業新聞の記事「眼光紙背:TPP、同人作家の不安」から

2015. 10.14  日経産業新聞の記事「眼光紙背:TPP、同人作家の不安」から

正論のパロディー撲滅だけで済まないサブカル界の不安

コラムの著者は、TPP交渉の大筋合意にそって懸念のあった著作権者が告訴しなくても司法当局が独自に捜査・起訴できる非親告罪化について、現著作物、すなわち元ネタの収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではないとグレーな決定となってことと、サブカルとの関係について語っている。

○同人誌即売会の多くは2次創作(パロディー)

非親告罪になればライバル間の通報合戦も想像され、作家の孵卵器になっていた即売会自体の先行きが危ぶまれていたが、最悪の事態は避けられた。しかし、線引きの収益性の評価はグレーで萎縮は免れないという。

この間にパロディーなどを広く認める「フェアユース」という仕組みやプロ作家が自作の2次利用を公認する動きをもっと広げようとの声も出てきたという。

話は正論だが、真に新しいポピュラー文化は権威の反抗と表裏一体であったので、既存勢力からの黙殺こそが、対抗文化の担い手を育てサブカルの原動力である。果たして、正論の場にどれだけの若者が集まるか、コラムの著者は危惧している。eyepenpencilhappy01